【免責事項】 本記事は、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。株式投資は、ご自身の判断と責任において行っていただくようお願いいたします。本記事の情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いません。
はじめに
「安定した高配当株を探している」「業績は良いのに、なぜか株価が割安な銘柄に興味がある」 そんな個人投資家の方々にとって、**みずほリース(東証プライム:8425)**は非常に興味深い投資対象かもしれません。
同社は過去最高益を更新するほどの好業績を叩き出し、配当利回りは4%を超える魅力的な水準にあります 。しかしその一方で、株価の割安さを示すPBR(株価純資産倍率)は1倍を大きく下回ったままです 。
なぜ、これほどの好業績企業が市場から「割安」と評価されているのでしょうか? この記事では、みずほリースの事業内容から最新の業績、株価指標、そして投資家が知るべき最大のリスクまでを徹底的に掘り下げます。

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みずほリースってどんな会社?- 「プラットフォームカンパニー」への挑戦
みずほリースは、その名の通りみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)を親会社に持つ、国内大手の総合リース会社です 。さらに、総合商社の
丸紅とも強力な戦略的アライアンスを結んでおり、この「銀行」と「商社」のハイブリッドなバックボーンが最大の強みとなっています 。
主な事業は、企業の設備投資を支える「リース・割賦」事業と、不動産や航空機など専門分野への「ファイナンス」事業です 。
近年、同社は単にモノを貸すだけの伝統的なリース会社の枠を超え、**「顧客と共に未来を共創するプラットフォームカンパニー」**への変革を掲げています 。これは、顧客の経営課題に対し、金融、DX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)といった多角的なソリューションを提供する企業を目指すという、野心的なビジョンです。
驚異的な業績!なのに、なぜ株価は割安なのか?


みずほリースの近年の業績は目覚ましく、2025年3月期決算では過去最高益を更新しました 。中期経営計画の目標を1年前倒しで達成するなど、その実行力は高く評価できます 。
特に注目すべきは、資本効率の高さを示す**ROE(自己資本利益率)が12.2%**という非常に高い水準にあることです 。一般的にROEが10%を超えると優良企業とされますが、みずほリースはこの基準をクリアしています。
しかし、ここからが不思議な点です。これほどの優良企業でありながら、株価の割安度を示すPBR(株価純資産倍率)は0.8倍を下回る水準で推移しています 。PBRが1倍割れということは、仮に会社が解散した場合に株主に戻ってくる価値(純資産)よりも、現在の株価(時価総額)の方が安いという状態を意味します。
この「優れた業績」と「割安な株価評価」の間に存在する大きなギャップこそ、みずほリースへの投資を考える上で最も重要なポイントです。
みずほリースの株価指標をライバルと比較


では、競合他社と比較してみましょう。リース業界の巨人であるオリックスや三菱HCキャピタルなどと比べると、みずほリースの立ち位置がより鮮明になります。
企業名(コード) | 株価(円) | PBR(倍) | PER(倍) | 配当利回り(%) | ROE(%) |
みずほリース (8425) | 1,071 | 0.77 | 7.0 | 4.48 | 12.2 |
オリックス (8591) | 3,177 | 0.88 | 9.0 | 3.77 | 8.76 |
三菱HCキャピタル (8593) | 1,057 | 0.86 | 11.2 | 4.25 | 7.78 |
東京センチュリー (8439) | 1,617 | 0.77 | 8.48 | 4.21 | 8.97 |
注: 株価は2025年6月下旬時点。各指標は最新の公表データに基づく。 出典:
この表から分かる通り、みずほリースはROE(資本効率)で競合を圧倒しているにもかかわらず、PERとPBR(株価の割安さ)では最も低い水準にあります。まさに「成長性と効率性に優れた割安株」と言えるでしょう。
株主還元の魅力:14期連続増配予定&高配当利回り
インカムゲインを重視する投資家にとって、みずほリースの株主還元策は非常に魅力的です。
- 高い配当利回り: 配当利回りは**約4.48%**と、東証プライム市場の平均を大きく上回る高水準です 。
- 連続増配: 2026年3月期も増配を予定しており、これが実現すれば14期連続の増配となります 。安定的に配当を増やし続けている実績は、経営の安定性を示す力強い証拠です。
以前はQUOカードがもらえる株主優待がありましたが、2023年に廃止されました 。しかし、これは「すべての株主に公平な利益還元を行う」という考えから、配当に一本化するための前向きな決定であり、実際に優待廃止分を考慮した増配が実施されています 。
【最重要】投資前に知るべき2つのリスク
ここまで良い点を多く挙げてきましたが、もちろんリスクも存在します。特に、みずほリースの割安な株価の背景には、構造的な問題が潜んでいます。
リスク1:親子会社上場のガバナンスリスク
これが、みずほリースの株価が割安な最大の理由と考えられています。 「親子会社上場」とは、親会社(この場合はみずほFGと丸紅)が上場しているにもかかわらず、その子会社であるみずほリースも上場している状態を指します。
この構造には、**「親会社の利益が、子会社の少数株主(一般の個人投資家など)の利益よりも優先されてしまうのではないか」**という懸念が常につきまといます。市場はこの潜在的な利益相反をリスクとみなし、株価を意図的に割り引いて評価する傾向があります。これが「親子会社上場ディスカウント」と呼ばれる現象です 。
みずほリースのPBRが1倍を大きく割り込んでいるのは、このガバナンスへの懸念が市場に根強く存在することの表れと言えるでしょう。
リスク2:マクロ経済のリスク(金利・景気)
リース事業は、経済全体の動向に業績が左右されやすいという特性があります。
- 金利上昇リスク: 日本銀行が金融政策の正常化を進め、金利が上昇すると、みずほリースが銀行などから資金を調達するコストも上がります。このコスト増をリース料金にうまく転嫁できなければ、収益性が圧迫される可能性があります 。
- 景気後退リスク: 景気が悪化すると、企業は設備投資に慎重になります。その結果、リース需要が減少し、業績に直接的な打撃を与える可能性があります 。
みずほリースの将来性は?成長の鍵は「アライアンス」と「循環型経済」
では、みずほリースは今後、これらのリスクを乗り越えて成長できるのでしょうか。その鍵は2つあります。
- みずほ・丸紅とのアライアンス強化 みずほFGの強固な顧客基盤と、丸紅のグローバルな事業展開力。この二つの力を融合させることで、新たな収益機会を生み出そうとしています 。すでに航空機リース事業では、丸紅と共同で米リース大手Aircastle社の経営に参画し、大きな成果を上げています 。このアライアンスから生まれるシナジーが、ガバナンスディスカウントを跳ね返すほどの価値を生み出せるかが、今後の成長の試金石となります。
- サーキュラーエコノミー(循環型経済)への貢献 「所有から利用へ」という時代の流れは、リース業界にとって大きな追い風です。製品のライフサイクル全体を管理するリース事業は、廃棄物を減らし資源を有効活用する「サーキュラーエコノミー」と非常に親和性が高いのです 。日本政府もこの分野を成長市場と位置付けており 、みずほリースもIT資産の再利用事業などを通じて、この巨大なビジネスチャンスを掴もうとしています 。
まとめ:みずほリースはこんな投資家におすすめ


最後に、これまでの分析をまとめてみましょう。
【みずほリースの魅力(強み)】
- 過去最高益を更新する好調な業績と高い成長性
- ROE12.2%という優れた資本効率
- PER・PBRともに市場平均より大幅に割安な株価
- 配当利回り4%超、14期連続増配予定という魅力的な株主還元
【みずほリースの懸念点(リスク)】
- 株価が割安な最大の要因である「親子会社上場」のガバナンスリスク
- 金利上昇や景気後退といったマクロ経済の影響を受けやすい事業構造
結論として、みずほリースは**「明確な成長戦略を持つ、高配当な割安株」**です。
この銘柄は、特に以下のような投資家に向いていると言えるでしょう。
- 親子会社上場という特有のガバナンスリスクを理解し、許容できる方
- 目先の株価変動に一喜一憂せず、長期的な視点で企業のファンダメンタルズ(業績や資産価値)を評価できる方
- 高い配当利回りによるインカムゲインを重視する方
企業のファンダメンタルズの強さと戦略のポテンシャルが、いずれ市場の評価(親子会社上場ディスカウント)を上回ると信じるならば、現在の割安な株価は絶好の投資機会と捉えることができるかもしれません。
【改めて免責事項】 本記事は情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的とするものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断でお願いします。
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