【徹底解説】FA界の革命児「B&R」が製造業を変える理由:磁気浮上からAIコーディングまで

製造業の自動化(FA)といえば、シーメンスやロックウェル、あるいは日本の三菱電機やオムロンを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、もしあなたが「マスカスタマイゼーション(個別大量生産)」や「変種変量生産」という課題に直面しているなら、オーストリア発の技術集団 B&R Industrial Automation (以下、B&R)を知らないのは損かもしれません。

今回は、ABBグループの一員でありながら、独自の「尖った」技術でFA業界に革命を起こし続けるB&Rについて、その特徴と最新動向を深掘りします。

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  • 某電機メーカーエンジニア
  • エンジニア歴10年以
ろぼてく
目次

1. B&Rとは?:PCベース制御のパイオニア

1979年、オーストリアの小さなガレージで創業したB&Rは、「Perfection in Automation」を掲げ、当時の常識だった専用ハードウェア(PLC)ではなく、汎用PC技術を産業用制御に持ち込む「PCベース制御」をいち早く確立しました

2017年にABBに買収されましたが、その立ち位置はユニークです。通常、大企業が買収する場合、買収された側が親会社に吸収されますが、B&Rの場合はABBのマシンオートメーション部門(PLCやサーボドライブ)がB&Rに統合される形をとりました。これは、B&Rの技術力がいかに突出していたかを物語っています

2. 物理法則を無視する!? 「アダプティブ・マシン」の世界

B&Rを語る上で外せないのが、リニア搬送システムと磁気浮上技術です。これらは従来のベルトコンベアによる「一直線の生産ライン」を過去のものにしようとしています。

  • ACOPOStrak(アコポストラック): 高速で動くシャトル(搬送子)が、分岐や合流を自由自在に行います。これにより、不良品だけを別ラインに排出したり、並列した加工ステーションに効率よく製品を振り分けたりすることが可能になります。
  • ACOPOS 6D(アコポス 6D): これはまさにSFの世界です。磁気浮上技術により、シャトルが空中に浮いたまま移動します。摩擦ゼロで摩耗粉が出ないため、クリーンルームや医薬品製造に最適です。さらに、前後左右(XY軸)だけでなく、浮上高さ(Z軸)や傾きまで制御できる「6自由度」を持っています。

3. 「設定するだけ」のエンジニアリングとAIの融合

ハードウェアだけでなく、ソフトウェア開発環境「Automation Studio」もB&Rの大きな武器です。PLC、モーション制御、HMI、安全制御をすべて一つの画面で開発できる統合環境は、エンジニアの負担を劇的に減らします。

さらに最新の動向として注目すべきは、AI(人工知能)の統合です。 マイクロソフトとの提携により開発された「Automation Studio Copilot」は、生成AIを活用したコーディング支援機能です。自然言語で指示を出して制御コードを生成したり、既存のコードを最適化したりすることが可能になり、深刻化するエンジニア不足への切り札として期待されています

4. 2024-2025年の市場環境:試練と次なる飛躍

B&Rは長らく年平均11%という驚異的な成長率を誇ってきましたが、2024年から2025年にかけては、世界的なFA市場の停滞の影響を受けています。

  • 在庫調整の波: コロナ禍での供給不足を恐れた顧客が部品を積み増した反動(デストッキング)により、2024年は新規受注が軟調に推移しました。親会社ABBの報告でも、ロボティクス&ディスクリート・オートメーション部門は市場の調整局面にあることが示されています。
  • 組織の最適化: この厳しい市況に対応するため、オーストリアの本社では2024年8月に管理部門を中心とした人員調整が報じられるなど、筋肉質な組織への転換が進められています。

しかし、これは「踊り場」に過ぎないという見方が大半です。人手不足や生産回帰(リショアリング)の流れは止まっておらず、特にB&Rが得意とする高付加価値な自動化システムへの需要は、在庫調整一巡後に再加速すると予測されています。

5. 競合との比較:Beckhoff vs B&R

よく比較されるのが、同じドイツ語圏のBeckhoff Automationです。両社ともPCベース制御をルーツに持ちますが、アプローチに微妙な違いがあります。

  • Beckhoff: Windowsベースの制御とEtherCAT通信を武器に、ITエンジニアに親しみやすい環境を提供。
  • B&R: リアルタイムOSとPOWERLINK(およびOPC UA over TSN)を軸に、よりFA専用機に近い堅牢性と、「mapp Technology」のような設定ベースの簡易さを重視。

どちらを選ぶかは「好み」の領域になりつつありますが、ABBのロボット部隊と完全統合された「マシンセントリックロボティクス」においては、B&Rが一歩リードしていると言えるでしょう

結論:B&Rは「未来の工場」への近道

B&Rは単なる機器メーカーではなく、「製造の常識」を覆すソリューションプロバイダーです。 初期コストや学習コストは安くないかもしれませんが、「バッチサイズ1」の究極の柔軟性を手に入れたいなら、B&Rの技術は間違いなく検討に値します。市場が再び成長軌道に乗る2025年後半に向けて、彼らの次の一手から目が離せません。


※本記事は2025年12月時点の調査情報に基づいています。

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この記事を書いた人

現役エンジニア 歴12年。
仕事でプログラミングをやっています。
長女がスクラッチ(学習用プログラミング)にハマったのをきっかけに、スクラッチを一緒に学習開始。
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