CODESYSとは?FA業界の常識を覆すオープンなPLCソフトウェアの全貌【2025年最新版】

「特定のPLCメーカーに縛られず、もっと自由に、もっと効率的に開発したい…」

ファクトリーオートメーション(FA)の現場で、このような悩みを抱えるエンジニアは少なくないでしょう。特定のハードウェアに依存する開発環境は、コスト増や設計の制約、サプライチェーンのリスクといった課題と常に隣り合わせです。

もし、開発ソフトウェアは無償で、世界中の500社以上のメーカーが提供するハードウェアを自由に選べるとしたら、あなたの自動化プロジェクトはどのように変わるでしょうか?

この記事では、そんな革新的な可能性を秘めたFAソフトウェア「CODESYS(コーデシス)」について、その基本から競合製品との比較、そして未来の展望まで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。

インダストリー4.0時代の新たな標準となりうるCODESYSの世界へ、ようこそ。

ろぼてく

今注目のソフトPLCの雄「Codesys」とは一体どのような会社なのでしょうか?

この記事を書いた人
  • 某電機メーカーエンジニア
  • エンジニア歴10年以
ろぼてく
目次

CODESYSとは?FA業界の「Android」と呼ばれる理由

CODESYSとは、ドイツのCODESYSグループが開発する、ハードウェアメーカーに依存しないIEC 61131-3準拠のオートメーションソフトウェアです 。  

従来のPLC開発が、特定のメーカーが提供するハードウェアとソフトウェアのセット(例:SiemensのPLCとTIA Portal)を前提としていたのに対し、CODESYSは全く異なるアプローチを取ります。

そのビジネスモデルは非常にユニークです 。  

  • 開発環境(IDE)は無償: PLCプログラムやHMI画面を開発するための「CODESYS Development System」は、誰でも無料でダウンロードして使用できます 。  
  • 実行環境(ランタイム)は有償: 開発したプログラムをPLCやIPC(産業用PC)で動かすための実行ソフトウェア「CODESYS Control」は、ハードウェアメーカーがライセンスを購入して自社製品に組み込みます。

この「OS(ランタイム)をライセンスし、開発キット(IDE)を無償で提供する」というモデルは、スマートフォンの世界におけるGoogleのAndroid戦略とよく似ています。このオープンな戦略により、CODESYSは世界中で500社以上のハードウェアメーカーと、数十万人のエンドユーザーからなる広大なエコシステムを構築しているのです 。  

ろぼてく

Codesysはドイツの会社なのですね。ハードウェアに依存しないPLCというのは画期的な発想です。

なぜ今CODESYSが選ばれるのか?3つの圧倒的なメリット

なぜ世界中のエンジニアが、従来の巨大メーカーのプラットフォームではなく、CODESYSに注目しているのでしょうか。その理由は、大きく3つのメリットに集約されます。

メリット1:究極のオープン性【ハードウェア非依存】

CODESYS最大の魅力は、特定のハードウェアメーカーに縛られないことです 。これにより、ユーザーは以下のような恩恵を受けられます。  

  • コスト削減: プロジェクトの要件に合わせて、複数のベンダーから最適な価格と性能のハードウェアを選定できます。高価な特定メーカーの製品に固執する必要はありません 。  
  • 柔軟性と将来性: 将来、より高性能なCPUが登場しても、アプリケーションコードを書き換えることなく新しいハードウェアへ移行できます。あなたのソフトウェア資産は、ハードウェアの進化から守られます 。  
  • サプライチェーンの強靭化: 近年の半導体不足で明らかになったように、特定メーカーの部品が入手困難になるリスクは常に存在します。CODESYSなら、代替のハードウェアを柔軟に選択できるため、サプライチェーンの寸断リスクを大幅に軽減できます 。  

メリット2:驚異のコストパフォーマンス【IDEが無償】

「高機能な開発環境は高価である」という常識を、CODESYSは覆します。

主要な競合であるSiemensの「TIA Portal」やRockwell Automationの「Studio 5000」は、ライセンス料が数十万円から、機能追加や年間サポート契約でさらに高額になることも珍しくありません 。  

一方、CODESYSの統合開発環境(IDE)は完全に無償です 。個人での学習から、企業のR&D、小規模なプロジェクトまで、誰でもコストをかけずに最先端のPLCプログラミングを始めることができます。Raspberry Piのような安価なデバイスでさえ、SoftPLCとして動かせる手軽さも魅力です 。  

メリット3:未来を先取りする先進性【仮想化とOOP】

CODESYSは、単にオープンで安価なだけではありません。常にオートメーション技術の未来を切り拓いてきました。

  • オブジェクト指向プログラミング(OOP): ソフトウェア開発の世界では常識となっているOOPを、FA業界でいち早く本格的に導入 。これにより、コードの再利用性や保守性が劇的に向上し、複雑で大規模なアプリケーション開発を効率化します。  
  • 仮想化とクラウド: 近年、CODESYSが最も注力しているのが「オートメーションのソフトウェア化」です。
    • CODESYS Virtual Control SL: 物理的なPLCを不要にし、制御ロジックをサーバーやエッジデバイス上の仮想コンテナ(Dockerなど)で実行可能にします 。これにより、ハードウェアコストの大幅な削減と、IT技術とのシームレスな融合が実現します。  
    • CODESYS Automation Server: 世界中のコントローラーをクラウドから一元管理。リモートでのデバッグやアプリケーションの展開を可能にし、IIoT時代の中央管理プラットフォームとして機能します 。  

CODESYSで何ができる?製品ポートフォリオを徹底解剖

CODESYSは、単一のツールではなく、様々な機能を組み合わせられる「プラットフォーム」です。その中核をなす製品群を見ていきましょう。

カテゴリ主要製品説明
エンジニアリングCODESYS Development SystemPLC、HMI、モーションなどを開発するための無償の統合開発環境(IDE) 。  
ランタイムCODESYS Control SL / Virtual Control SLIDEで作成したプログラムを実行するソフトウェア。様々なCPUやOS、仮想環境に対応 。  
アドオン機能Visualization, Motion, Safety, FieldbusHMI画面作成、モーション制御、安全制御(SIL2/3)、各種産業用通信プロトコルなどを追加するモジュール群 。  
エコシステムCODESYS Store, Automation Serverソフトウェアやライブラリを購入できるアプリストアと、コントローラーを管理するクラウドプラットフォーム 。  

これらのコンポーネントを組み合わせることで、小規模な装置制御から、安全機能やロボティクスを含む大規模で複雑な生産ライン、さらにはクラウドと連携したスマートファクトリーまで、あらゆるオートメーションの要求に単一のプラットフォームで応えることができます 。  

競合製品と徹底比較!Siemens, Rockwell, Beckhoffとの違いは?

CODESYSの立ち位置をより明確にするため、主要な競合製品と比較してみましょう。

プラットフォームベンダービジネスモデルライセンス技術的アプローチ強み
CODESYSCODESYSグループハードウェア独立型IDE無償、ランタイム有償オープン(IEC 61131-3)柔軟性、コスト、広大なエコシステム
TIA PortalSiemens垂直統合型高価なライセンス独自仕様、統合型市場支配力、ワンストップ
Studio 5000Rockwell垂直統合型高価なライセンス独自仕様、統合型北米での支配力、強力なサポート
TwinCAT 3BeckhoffPCベースHW/SWIDE無償、ランタイム有償PCベース、IEC 61131-3パフォーマンス、IT統合

対 Siemens / Rockwell:オープン vs クローズド

SiemensやRockwellは、ハードウェアからソフトウェア、サポートまでを自社で一貫して提供する「垂直統合モデル」の巨人です。このモデルは、すべてが最適化されている安心感がある一方、高コストベンダーロックイン(一度導入すると他社製品に乗り換えにくい)という大きなデメリットを抱えています。

CODESYSは、この「壁に囲まれた庭」モデルに対するアンチテーゼです。オープンな規格ハードウェア選択の自由、そして圧倒的なコストパフォーマンスを武器に、ユーザーをベンダーロックインから解放します 。  

対 Beckhoff:似て非なる「フレネミー」

PCベース制御の雄、BeckhoffのTwinCATは、CODESYSにとって非常に興味深い存在です。実は、TwinCATはCODESYSのコンセプトを統合しており、BeckhoffはCODESYSの重要な顧客の一社です 。しかし、市場では強力な競合相手でもあります。  

両者とも「IDE無償、ランタイム有償」という似たビジネスモデルを採用していますが 、Beckhoffが自社の高性能な産業用PCとの組み合わせに特化しているのに対し、CODESYSはより広範なメーカーのハードウェアで利用できるという点で異なります。  

ろぼてく

一応TwinCATも一般的なPCで使うことも可能です。

日本市場でのCODESYSの現状と未来

正直なところ、2025年現在、日本市場においてCODESYSの存在感はまだ限定的です。三菱電機、オムロン、キーエンスといった国内メーカーの牙城は厚く、多くの現場では独自仕様のプラットフォームが主流です 。  

しかし、風向きは変わりつつあります。 グローバルな競争が激化する中、コスト削減開発の柔軟性は日本企業にとっても喫緊の課題です。また、インダストリー4.0やIIoTへの取り組みが本格化するにつれ、オープンな規格IT技術との親和性がより一層重要になります。

これらのトレンドは、まさにCODESYSが持つ強みと完全に一致します。特に、先進的な技術の導入に積極的なシステムインテグレータや、グローバル展開を目指す装置メーカーにとって、CODESYSは従来の枠組みを打ち破るための強力な武器となるでしょう。

まとめ:FAの未来を、もっとオープンに。

CODESYSは、単なるPLCプログラミングソフトではありません。それは、FA業界をハードウェアの呪縛から解き放ち、真にソフトウェア主導のオープンな世界へと導くためのプラットフォームです。

  • ハードウェア非依存による究極の自由度とコスト削減 。  
  • 無償のIDEがもたらす、圧倒的な導入のしやすさ 。  
  • 仮想化やクラウドを見据えた、未来志向の先進技術 。  

もしあなたが、現状のPLC開発環境に限界を感じているなら、あるいは次世代のオートメーション技術を模索しているなら、まずはCODESYSを試してみてはいかがでしょうか。

公式サイトの**(https://store.codesys.com/en/)**から開発環境を無料でダウンロードし**から開発環境を無料でダウンロードし)、あなたのPCや、もし手元にあればRaspberry Piにインストールするだけで、FAの新たな扉が開かれるはずです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

現役エンジニア 歴12年。
仕事でプログラミングをやっています。
長女がスクラッチ(学習用プログラミング)にハマったのをきっかけに、スクラッチを一緒に学習開始。
このサイトではスクラッチ/プログラミング学習、エンジニアの生態、エンジニアによる生活改善について全力で解説していきます!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次