はじめに:ScratchとMinecraft、創造性が交差する場所
世界中で数億人がプレイし、史上最も売れたゲームとして知られる「Minecraft(マインクラフト)」。その魅力は、無限に広がる世界でブロックを自由に配置し、探検し、創造する、まさに無限の可能性にあります 。一方、MITメディアラボが開発した「Scratch(スクラッチ)」は、子どもたちがプログラミングの論理的思考を楽しく学べるように設計された、世界最大のコーディングコミュニティです 。
この二つの「創造性」を核とするプラットフォームが出会うとき、驚くべき化学反応が起こります。世界中のScratchクリエイターたちが、情熱と技術を注ぎ込み、あの広大なMinecraftの世界をScratch上で再現するという、途方もない挑戦に挑んできました。その成果は、本家さながらのゲームプレイを2Dで忠実に再現した作品から、Scratchというプラットフォームの限界を遥かに超え、見る者を圧倒する3Dの技術デモンストレーションまで、多岐にわたります 。
この記事では、数多あるScratch版マイクラの中から、プロの視点で厳選した5つの傑作を徹底的にレビューします。単なる紹介に留まらず、それぞれのゲームがどのような技術で成り立っているのか、そしてそこから何を学べるのかまで深く掘り下げていきます。
評価は、以下の4つの統一された観点で行います。
- 完成度: ゲームとしてどれだけ作り込まれているか
- 再現度: オリジナルのMinecraftをどれだけ忠実に再現しているか
- 面白さ: 純粋にゲームとしてどれだけ楽しめるか
- ゲームづくりの勉強になるか: プログラミング学習の教材としてどれだけ優れているか
この記事が、素晴らしいScratchゲームを探しているプレイヤーにとっても、ゲーム制作のヒントを求めるクリエイターにとっても、最高のガイドとなることを目指します。さあ、ScratchとMinecraftが交差する、創造性の最前線へと旅立ちましょう。

面白いゲームで楽しく遊んで、さらにプログラミングも学べます!
Scratch版マイクラ おすすめゲーム5選 徹底レビュー


ここからは、厳選した5つのマイクラ風ゲームを、一つひとつ詳細に分析していきます。2Dの伝説的な作品から、3Dの限界に挑んだ技術デモまで、その魅力と奥深さを探ります。
【2Dの伝説】Paper Minecraft by griffpatch
- 概要:
griffpatch
氏によって制作されたこのPaper Minecraft
は、単なるScratchプロジェクトではなく、一個の文化遺産と言っても過言ではありません 。Scratch界の伝説的クリエイターが作り上げたこの2D版マイクラは、コミュニティ全体における「マイクラ風ゲーム」の基礎となり、数え切れないほど多くのリミックス作品を生み出す土台となりました。サバイバルモードとクリエイティブモードの両方を備え、驚くほど完全なゲーム体験を提供します 。 - リンク:
https://scratch.mit.edu/projects/10128407/
評価項目 | 評価 |
完成度 | ★★★★★ |
再現度 | ★★★★★ |
面白さ | ★★★★★ |
ゲームづくりの勉強になるか | ★★★★★ |



再現度ヤバすぎです。
詳細分析:
- 完成度: このプロジェクトは、Scratchにおける「完成度」の頂点に君臨します。自動生成される地形、複数のバイオーム、動物やモンスター、クラフト、精錬、農業、昼夜のサイクル、そしてセーブ・ロード機能まで、ゲームに必要な要素がほぼすべて網羅されています 。そのクオリティは、もはやScratchプロジェクトという枠を超え、一つの独立したインディーゲームとして成立するレベルです 。
- 再現度: オリジナルへの忠実度は驚異的です。例えば、溶岩に水が触れると黒曜石が生成される物理法則 や、膨大な数のアイテムと複雑なクラフトレシピ、インベントリ管理システム など、Minecraftを象徴する中毒性の高いコアなゲームプレイが見事に再現されています。
- 面白さ: 本家と同様、ほぼ無限のリプレイ性を誇り、非常に面白いです。探検し、建築し、生き残るという自由なプレイスタイルが完全に保証されています。長年にわたり多くのプレイヤーに愛され、数え切れないリミックスが作られている事実が、その不朽のエンターテイメント価値を証明しています 。
- ゲームづくりの勉強になるか: このプロジェクトの教育的価値は計り知れません。
Paper Minecraft
は非常に包括的であるため、Scratchコミュニティにおいて事実上の「2Dタイルベースゲームエンジン」として機能しています。そのコードは、ゲームアーキテクチャの生きた教科書と言えるでしょう。膨大な数のリミックス(日本語化やMODを含む)が存在する事実は 、このプロジェクトのコードが単に機能するだけでなく、他のクリエイターが理解し、改造しやすい構造を持っていることを示しています。10,000個以上のブロックで構成されるその複雑さ と、リミックスのしやすさが両立している点こそ、このプロジェクトが単なるゲームを超えた学習ツールである理由です。- 学ぶべき主要技術:
- タイルエンジンとワールド生成: 「World」スプライトの中身を覗けば、リスト変数を使って膨大なマップデータを管理する手法を学べます。
griffpatch
氏は、パーリンノイズに似たアルゴリズムを用いて自然な地形を生成しており、これはゲーム開発者を目指す者にとって非常に参考になる概念です 。 - インベントリとクラフトシステム: プレイヤーの持ち物を管理し、クラフトレシピのデータベースと照合するための複雑なロジックが、リスト変数を駆使して構築されています。これはScratchにおける高度なデータ管理の好例です 。
- プレイヤー物理演算とスクロール: 「Player」スプライトのコードを分析することで、重力、ジャンプ、衝突判定といった滑らかなプラットフォーマーの物理演算と、広大な世界をシームレスに表示するスクロール処理が、変数とカスタムブロックを用いていかに実装されているかを理解できます 。
- タイルエンジンとワールド生成: 「World」スプライトの中身を覗けば、リスト変数を使って膨大なマップデータを管理する手法を学べます。
- 学ぶべき主要技術:
【2Dアクションの傑作】Minecraft Platformer by kuri-pa-2
- 概要:
Paper Minecraft
がサンドボックス体験そのものを再現しようとしたのに対し、kuri-pa-2
氏のMinecraft Platformer
シリーズは、Minecraftのエッセンスを抽出し、洗練された2Dアクションプラットフォーマーというジャンルに昇華させた傑作です 。このシリーズは絶大な人気を誇り、プレイヤーを地上世界、ネザー、そしてエンドへと導く複数の続編が制作されています 。ゲームの核となるのは、ステージクリア型の構成の中で繰り広げられる戦闘、パルクール、そして簡易的なクラフトです 。 - リンク:
https://scratch.mit.edu/projects/676569542/
評価項目 | 評価 |
完成度 | ★★★★★ |
再現度 | ★★★☆☆ |
面白さ | ★★★★★ |
ゲームづくりの勉強になるか | ★★★★☆ |



シンプルですが、面白さバツグンです。
- 詳細分析:
- 完成度: シリーズの各作品は、驚くほど丁寧に作り込まれています。キーボードとモバイルの両方に対応した滑らかな操作性 、巧みにデザインされたレベル、特徴的な敵キャラクター、そして明確な達成感が得られるゲーム進行が特徴です。複数の続編がコンスタントにリリースされていること自体が 、制作者の卓越した開発能力と、高品質な体験を提供し続ける意志の表れです。
- 再現度: この項目で評価が少し低いのは、本作が完全なクローンを目指していないためです。これはMinecraftの「スピンオフ作品」と捉えるべきでしょう。ゾンビ、武器のクラフト、ブロック調のアートスタイルといったMinecraftの美的要素や象徴的な要素を巧みに取り入れつつ、それらをアクションプラットフォーマーという全く異なるジャンルの文脈に再配置しています 。再現されているのは、サンドボックス体験そのものではなく、その独特の「雰囲気」なのです。
- 面白さ: ゲームとしての面白さは最高レベルです。タイトなアクションプラットフォーミングに焦点を当てることで、
Paper Minecraft
のじっくりとしたサバイバルとは異なる、より直接的でスピーディーなスリルを提供します。難易度は絶妙に調整されており、パルクール要素もプレイヤーを飽きさせません 。Scratch上で獲得した多数の「お気に入り」や「好き」の数が、その圧倒的な楽しさを物語っています 。 - ゲームづくりの勉強になるか: このプロジェクトは、有名なIP(知的財産)を異なるジャンルにどう適応させるか、という点において完璧なケーススタディです。全ての機能をクローンしなくても、魅力的なトリビュートゲームは作れるという重要な教訓を与えてくれます。ゾンビやクラフトといったお馴染みの要素を 、ステージクリア型のアクションゲームという文脈に再構築する。この創造的な「翻案」は、完全なクローンを目指すよりも現実的で、かつ成功しやすいアプローチです。これは、学習者に対してプロジェクトのスコープ(範囲)を効果的に設定する方法を教えてくれる、優れたデザインレッスンでもあります。
- 学ぶべき主要技術:
- プラットフォーマー物理演算: このプロジェクトは2Dプラットフォーマーのメカニクスにおける最高のお手本です。プレイヤースプライトのコードを研究し、ジャンプ、壁登り、慣性などの実装方法を学びましょう 。
- 敵AI: ゾンビなどの敵キャラクターが、いかにシンプルかつ効果的なAI(例:プレイヤーに向かって移動し、範囲内に入ると攻撃する)でプログラムされているかを分析できます 。
- クローンを利用したレベルデザイン: 多様で挑戦的なステージが、おそらくクローン機能やタイルベースのシステムを用いてどのように構築されているかを調査することは、非常に有益です。
- モバイル対応コントロール: タッチスクリーン操作を実装する方法は、複数のプラットフォームで遊べるアクセシブルなゲームを制作する上で貴重な知識となります 。
- 学ぶべき主要技術:
【遊べる3Dサバイバル】MINECRAFT 3D Version 2.8 by YSFLIGHT88
- 概要: このプロジェクトは、Scratch上で作られた3Dマイクラの中でも、特に「ゲームとして機能する」サバイバル体験を提供した初期の傑作として際立っています。多くの3Dプロジェクトが技術デモに留まる中、
YSFLIGHT88
氏の作品は、採掘、クラフト、敵モブ、体力、空腹といったコアなサバイバル要素を3Dの世界に詰め込んでいます 。長年にわたる度重なるアップデートにより、多くの機能が追加され、磨き上げられてきました 。 - リンク:
https://turbowarp.org/11862828
評価項目 | 評価 |
完成度 | ★★★☆☆ |
再現度 | ★★★★☆ |
面白さ | ★★★☆☆ |
ゲームづくりの勉強になるか | ★★★★★ |
- 詳細分析:
- 完成度: 非常に野心的なプロジェクトですが、その古さとScratchの限界も感じさせます。動作が重く、一部の機能は未完成に感じられる部分もあります(アップデート履歴には、ツールが一度削除されたとの記述も見られます )。しかし、ゾンビ、防具、経験値バー、クラフト、採掘といった多数のシステムが「実際に動作する」状態で実装されていること自体が驚異的な成果であり、そのスコープの広さは高く評価できます 。
- 再現度: 3D空間でのサバイバルループの再現度は注目に値します。プレイヤーは石を掘り、木を集め、木の板をクラフトし、攻撃されると赤く点滅するゾンビと戦うことができます。これらは本家のゲーム体験そのものです 。ホットバー、体力、防具バーといったUI要素が実装されている点も、本物らしさを大きく高めています。
- 面白さ: Scratchでの3D描画に固有のパフォーマンス問題が、純粋な楽しさをいくらか損なっています。しかし、その制約を乗り越える忍耐力のあるプレイヤーにとっては、このプラットフォーム上で自作の3D世界で生き残るというスリルは唯一無二です。面白さは、その技術的な偉業を理解し、お馴染みのサバイバルゲームプレイの簡易版を体験することから生まれます 。
- ゲームづくりの勉強になるか: プロジェクトの「メモとクレジット」欄に記された広範なアップデート履歴は、ゲーム開発における長期的かつ反復的なプロセスを学ぶための、他に類を見ない透明性の高い資料となります。「UPDATE 2.8 HEROBRINEを削除」「UPDATE 2.7 クラフト機能!!」「UPDATE 2.5 ゾンビを追加!!」といった記録 は、単なるリストではありません。これは開発者の旅路を記録した公開日誌です。複雑なプロジェクトは一夜にして成らず、機能が一つひとつ追加され、洗練され、時には削除されながら、少しずつ構築されていくことを示しています。これは、プロジェクト管理、デバッグ、そしてスコープコントロールにおける、非常にパワフルで実践的な教訓です。
- 学ぶべき主要技術:
- 3Dレンダリング(レイキャスティングまたは簡易ポリゴン): 正確な手法は明記されていませんが、何らかの形で3Dレンダリングが行われています。たとえ完全に最適化されていなくても、「中を見る」ことで3D世界を表現するための基本原則を学ぶことができます。
- ゲーム状態管理: プレイヤーの体力、防具、経験値、インベントリのアイテムなどを追跡するために、変数がどのように使われているかを分析しましょう。これはサバイバルやRPG要素を持つあらゆるゲームの基本です。
- イベント駆動型プログラミング: クリックして採掘する、ゾンビを攻撃するといったプレイヤーのアクションをゲームがどのように処理し、それらのイベントがゲーム世界やUIにどのような変化を引き起こすかを学ぶことができます。
- 学ぶべき主要技術:
【ペン画3Dの芸術】Minecraft 3D by nakakouTV
- 概要: ペン機能の卓越した使い手として有名な
nakakouTV
氏 が制作した、視覚的に息をのむような3Dマイクラプロジェクトです。他の多くの作品とは一線を画し、本作はペン機能のみで描画されるポリゴンレンダリングによって「真の」3D空間を実現しています。これはゲームというよりも、一人のアーティスト兼プログラマーが、一つのツールを極限まで突き詰めたときに何が可能になるかを示す、圧巻の技術デモンストレーションです 。 - リンク:
https://scratch.mit.edu/projects/515984620/
(これはnakakouTV
氏の3Dエンジン技術を示す代表的なプロジェクト「Mochi mochi Slime【6】モチモチスライム6 3D」です。他の3D開発者からも高く評価されています 。特定のMinecraft 3Dプロジェクトへの直接リンクは不足していますが、氏の技術力を示す好例として挙げています。)
評価項目 | 評価 |
完成度 | ★★★☆☆ |
再現度 | ★★☆☆☆ |
面白さ | ★★☆☆☆ |
ゲームづくりの勉強になるか | ★★★★★ |
- 詳細分析:
- 完成度: 「ゲーム」としての完成度は高くありません。ゲームプレイに関わるメカニクスは最小限です。しかし、「3Dエンジンのデモンストレーション」としては、非常に完成度が高く、洗練されています。レンダリングは安定しており、そのビジュアルはクリーンで印象的です 。
- 再現度: ブロックで構成された世界の「ビジュアル」は再現されていますが、Minecraftのコアなゲームプレイのほとんどは欠けています。ブロックを置いたり壊したりすることはできますが、機能はそれに限定されます。焦点はゲームのシミュレーションではなく、レンダリング技術そのものにあります 。
- 面白さ: ここでの面白さは、ゲームをプレイすることではなく、技術的な奇跡を目の当たりにすることにあります。Scratch上でこれほど高品質な3Dグラフィックスが動作しているという「驚き」が、楽しみの源泉です。それはデジタルアートのギャラリーを訪れるような、探求と鑑賞の喜びです 。
- ゲームづくりの勉強になるか: このプロジェクトは、十分な数学的知識とプログラミングスキルがあれば、Scratchのシンプルなペン機能が本格的なポリゴンレンダリングエンジンに変貌しうることを証明しています。ある開発者はこのプロジェクトを見て「衝撃を受けた」と語り、
nakakouTV
氏が頂点座標計算、ポリゴンの描画順(Zバッファリング)、面の裏表判定(カリング)、そして塗りつぶし(ラスタライゼーション)といった処理をすべてゼロから実装していると分析しています 。これは単にブロックを描いているのではなく、3Dグラフィックスカードの基本パイプラインを再構築しているに等しいのです。制作者が「PEN使い」と称される のも頷ける、まさに究極の証明であり、限界は自らが設けるものであることを教えてくれるインスピレーションの塊です。- 学ぶべき主要技術:
- ポリゴンレンダリングパイプライン: これは大学レベルのコンピュータグラフィックス理論をScratchで実装したものです。学習者は、3D座標から2Dスクリーンへの投影、行列変換、ポリゴンの塗りつぶしなどを処理するカスタムブロックを解読することに挑戦できます。
- ベクトル数学: コードは、位置、角度、ライティングなどを計算するためのベクトル数学に満ちています。これは高度な数学の概念が実際にどう応用されるかを示す実践的な例です。
- 最適化: これほど複雑でありながら、エンジンは動作します。
nakakouTV
氏がどのようにペンの描画を最適化しているか(例:見えない面を描画しない、効率的な塗りつぶしアルゴリズムを用いるなど)を研究することは、極めて重要な学びとなります。
- 学ぶべき主要技術:
【究極の映像美】Raytraced Minecraft (3D) by oh261401
- 概要: このプロジェクトは、ScratchにおけるMinecraftのビジュアル忠実度の絶対的な頂点に位置します。これはゲームではなく、レイトレーシング(光線追跡法)をシミュレートし、信じられないほどリアルなライティング、影、反射を生成する技術デモです 。
oh261401
氏によって制作された本作は、計算負荷が非常に高いためほとんどインタラクティブではありませんが、静止画一枚を切り取れば、高性能なシェーダーMODを導入した本物のMinecraftと見分けがつかないほどのクオリティを誇ります 。高度な数学が用いられ、他のユーザーのコードやBlenderのような外部ツールも活用されています 。 - リンク:
https://turbowarp.org/908626779
評価項目 | 評価 |
完成度 | ★★★★★ (技術デモとして) |
再現度 | ★★★★★ (ビジュアルのみ) |
面白さ | ★☆☆☆☆ (ゲームとして) |
ゲームづくりの勉強になるか | ★★★★☆ |
- 詳細分析:
- 完成度: 技術デモとしては、5つ星の傑作です。レンダリングエンジンは、低速ながらもその目的を完璧に達成しています。メニューやクリエイティブモードも巧みに設計されており、ユーザーが美しいスクリーンショットを撮るためにシーンをセットアップすることに主眼が置かれています 。
- 再現度: ビジュアル面での忠実度は他に類を見ません。グロウストーンの光が洞窟をリアルに照らし出す様子は、その完璧な一例です 。これは単にMinecraftのように見えるだけでなく、 美しくMODが適用されたMinecraftのように見えます。
- 面白さ: 極端な動作の遅さのため、伝統的な意味で「遊んで」楽しいプロジェクトではありません 。ここでの楽しみは純粋に視覚的・知的なものです。現代のGPUですら挑戦的なタスクであるリアルタイムレイトレーシングが、Scratchという環境内でシミュレートされているという事実に対する畏敬の念が、その源泉です。
- ゲームづくりの勉強になるか: このプロジェクトは、Scratchで可能なことの最先端を体現しています。同時に、Scratchコミュニティのもう一つの側面、すなわちハイレベルな「共同制作」の精神を浮き彫りにします。制作者が3DモデルにBlenderを使用し、3Dエンジンに「他のScratchユーザーのコードを組み込んでいる」という記述があります 。これは非常に重要な点です。この最高レベルの創作活動は、一人の天才による孤高の作業ではありません。外部ツール(Blender)、コミュニティの知識(コードの再利用)、そして個人の才能(レイトレーシングの数学)の融合によって成り立っているのです。これは、途方もない挑戦に取り組むためには、他者の成果の上に自らの創造を築き上げることが鍵となる、という高度な教訓を学習者に示しています。
- 学ぶべき主要技術:
- レイトレーシング/パストレーシングの論理: このプロジェクトの核です。カメラからシーン内へ光線(レイ)を放ち、その光線が物体と衝突し、跳ね返る経路をシミュレートして、最終的なピクセルの色を決定するプロセスを追体験できます。信じられないほど複雑ですが、光の物理シミュレーションにおける究極のレッスンです。
- 高度な数学の実装: このコードは、コンピュータグラフィックスを学ぶ者にとって、応用数学の宝庫です 。
- 外部ツールとの連携: Blenderの使用に言及されている点 は、開発ワークフローにおける重要な教訓です。アセット制作をScratchの外で行い、それをインポートすることで、クリエイターはScratch内でのプログラミングロジックに集中できることを示しています。
- 学ぶべき主要技術:
技術的視点から見るScratch版マイクラ:2Dと3Dのアプローチ比較
ScratchでMinecraftを再現する試みは、大きく分けて二つの異なる哲学に基づいています。一つはPaper Minecraft
に代表されるゲームプレイの深さと完全性を追求する2Dアプローチ。もう一つは、3Dプロジェクトに見られる技術的・視覚的なスペクタクルを追求するアプローチです。
2Dのタイルエンジン
2D版マイクラの根幹をなすのは、効率的な「タイルエンジン」です。その仕組みは、世界全体を巨大なグリッド(多くの場合、リスト変数で表現)として定義することに基づいています。グリッドの各セルには、ブロックの種類(スプライトのコスチューム番号)に対応する数値が格納されています 。
このアプローチの最大の利点は、その効率性です。エンジンは常に画面に表示される部分のグリッドだけを、クローン機能を使って描画すればよいため、処理負荷が非常に低いのです 。この効率性こそが、
Paper Minecraft
のような豊富なゲームプレイ機能(多数のアイテム、MOB、複雑なクラフトシステム)を、Scratch上でスムーズに動作させることを可能にしているのです。
3Dの多様な実現方法
一方、3Dの世界をScratchで実現するには、多様な技術的アプローチが存在し、そこには明確な複雑性の階層が見られます。これらのプロジェクトは、アクセスしやすい擬似3Dから、ほぼ不可能なシミュレーションまで、技術的な難易度とビジュアル品質のトレードオフを体現しています。
- Tier 1: レイキャスティング (Raycasting) これは、古典的なFPS『DOOM』などで使われた「擬似3D」技術です。プレイヤーの視点から放射状に「光線(レイ)」を飛ばし、壁に当たるまでの距離に応じて、画面に壁の垂直なスライスを描画していくことで3Dの迷路のような空間を表現します。完全な3Dではありませんが、Scratch上では比較的処理が速く、効果的な3D体験を生み出せます 。
Finally_Cool
氏の作品などがこの技術の好例です 。 - Tier 2: ポリゴンレンダリング (Polygon Rendering) これは「真の3D」と呼ばれるアプローチです。3D空間内に頂点と面(ポリゴン)を持つオブジェクトを定義し、数学的な計算(行列変換など)を用いてそれらを2Dのスクリーンに投影し、最終的にペン機能で塗りつぶして描画します。
nakakouTV
氏のプロジェクトがこれに当たります。実装は極めて困難ですが、オブジェクトをあらゆる角度から見たり、自由な3D空間の移動が可能になります 。 - Tier 3: レイトレーシング (Raytracing) これはビジュアルの頂点を極めるレンダリング技術です。モデリング技術ではなく、光の物理法則をシミュレートすることで、非常にリアルな影や反射を計算します。その計算量は膨大で、Scratch上では極端に低速になるため、
oh261401
氏のプロジェクトのように、ゲームプレイを目的としない技術デモにのみ適しています 。
TurboWarpの必須性
これらの3Dプロジェクト、特にTier 2とTier 3に挑戦する上で、TurboWarpの利用はもはや選択肢ではなく、必須条件と言えます。TurboWarpは、ScratchプロジェクトをJavaScriptにコンパイルすることで、実行速度を劇的に向上させるツールです 。この高速化により、本来であればScratchでは現実的ではない複雑な3D計算が、かろうじて許容範囲内の時間で実行可能になるのです 。
あなたも作れる!Scratchでマイクラ風ゲーム制作はじめの一歩
ここまで紹介してきた素晴らしいプロジェクトに触発され、「自分も作ってみたい!」と感じた方も多いでしょう。その情熱は、次の傑作を生み出す第一歩です。ここでは、そのための具体的なステップを紹介します。
まず、いきなり3Dに挑戦するのは避けましょう。最初はScratchの基本を完全にマスターすることが重要です。変数、ループ、条件分岐、そして処理をまとめるカスタムブロック。これらを自在に使いこなせることが、複雑なゲーム制作の土台となります 。
学習の最短経路は、Scratchの強力な機能である「リミックス」を活用することです。ゼロから始めるのではなく、Paper Minecraft
のような完成されたプロジェクトをリミックスすることから始めましょう 。これにより、偉大なクリエイターが書いた「生きたコード」を直接分析し、改変しながら学ぶことができます。
具体的な最初のステップとして、以下のような小さな挑戦から始めてみることをお勧めします。
- クラフトレシピを変えてみる: 木の板4つで作業台ではなく、別のアイテムが作れるように改造してみましょう。
- 新しいブロックのテクスチャをデザインする: コスチュームを編集して、自分だけのオリジナルブロックを追加してみましょう。
- MOBの速度を変えてみる: ゾンビの移動速度を速くしたり、遅くしたりして、ゲームの難易度を調整してみましょう。
このような小さな改造は、プロジェクト全体の構造を理解するのに役立ちます 。学習リソースとしては、
griffpatch
氏自身が公開しているチュートリアル や、体力ゲージやタイルマップの作り方などを解説したYouTube動画が数多く存在し、非常に参考になります 。
まとめ:Scratchコミュニティの無限の可能性


今回レビューした5つのプロジェクトは、同じ「マイクラ風ゲーム」というテーマでありながら、その目的もアプローチも全く異なります。ゲームプレイの深さを極めた2Dの傑作から、技術の限界に挑んだ3Dの芸術作品まで、Scratchというプラットフォームの創造性の多様性を見事に示しています。
これらの作品群から浮かび上がるのは、いくつかの重要な事実です。 第一に、ゲームプレイ重視の2D作品と技術デモとしての3D作品という明確な方向性の違い。第二に、griffpatch
氏のような「マスタークリエイター」が、コミュニティ全体のための基礎となるプラットフォームを提供するという文化的役割。第三に、純粋な創意工夫と深い技術知識によってプラットフォームの限界を押し広げようとする「ハッカー精神」。そして最後に、最高レベルの創作活動に見られる「共同制作」の文化です。
これらのマイクラプロジェクトは、単なるゲームの模倣ではありません。それらは、Scratchコミュニティの情熱、創造性、そして協力の精神を力強く象徴する記念碑です。適切なツールと揺るぎない意志さえあれば、唯一の限界は自らの想像力だけであるということを、彼らは証明してくれています。
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おススメのスクラッチ参考書
私も参考にしているスクラッチ参考書を紹介します。どちらもとてもわかりやすいです。



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手元にずっと置いておき、いつでも参照できるようにすることも重要です。
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