こんにちは、エンジニアブロガーの「ろぼてく」です。
先日、友人からこんな質問を受けました。「JBLのイヤホンって最近よく見るけど、結局どこの国のメーカーなの?品質ってどうなの?」
これは、電気製品の設計や品質保証に10年以上携わってきた私にとって、非常に興味深い質問です。なぜなら、単に「アメリカのメーカーですよ」と答えるだけでは、このブランドの面白さや奥深さの1%も伝わらないからです。
製品の「魂」がどこで生まれ、どのような思想で設計され、どう品質が担保されているのか。私は普段からそういった視点で製品を見ています。この記事では、世界的な音響ブランド「JBL」を、その歴史から現在の立ち位置、そして皆さんが一番気になるであろう「イヤホン」の品質と評判まで、エンジニアの視点で徹底的に解剖していきます。
- 電機メーカー勤務
- エンジニア歴10年以上
- 品質担当経験あり

結論:どこの国のメーカーか?

結論から言うと、JBLはアメリカ合衆国で生まれた音響機器メーカーです 。
しかし、話はそれほど単純ではありません。JBLの正体を理解するには、その歴史と現在の資本関係を分けて考える必要があります。
アメリカに宿る「音の魂」- 創業と伝統
JBLは1946年、天才的な音響エンジニアであったジェームス・B・ランシング(James B. Lansing)によってカリフォルニア州で設立されました 。彼のイニシャル「J.B.L.」が、そのままブランド名になっています。
JBLの原点は、家庭用オーディオだけでなく、プロフェッショナルの世界に深く根差しています。映画館の音響システム(THX認定スピーカーの最初の認定を受けるなど)から、ザ・ビートルズが使用したことで有名なアビーロード・スタジオをはじめとする世界中のレコーディングスタジオ、さらには大規模なコンサート会場まで、JBLは「音の基準」を創り上げてきた存在なのです 。このプロ向けの現場で培われた音響技術と哲学こそが、JBL製品に共通して流れる「サウンドDNA」の源泉です。
グローバルな企業への進化 – 資本の変遷
JBLの所有権は時代と共に変化してきました。
- 1969年: 同じくアメリカの音響大手、ハーマン・インターナショナルに買収されます 。これにより、JBLは巨大なオーディオグループの一員となりました。
- 2017年: そのハーマン・インターナショナルを、韓国の巨大テック企業である**サムスン電子(Samsung Electronics)**が約80億ドルで買収します 。
では、今のJBLは「韓国のメーカー」なのでしょうか?
資本的な観点で見れば、親会社は韓国のサムスン電子です 。しかし、製品開発の心臓部やブランドのアイデンティティ、そしてサウンド哲学は、今もなおアメリカにあります 。サムスンによるハーマン買収の主な目的は、急成長するコネクテッドカー(車載情報システム)分野の強化であり、JBLが長年培ってきた音響技術とブランド力を高く評価して傘下に収めた形です 。
つまり、JBLのアイデンティティを消し去るのではなく、その専門性を尊重し、グループ全体の技術力を高めるための戦略的な買収だったのです。
したがって、JBLの現状を最も正確に表現するならば、**『アメリカ生まれ、アメリカ育ちのブランドだが、現在は韓国のサムスン電子グループの一員』**となります。製品に宿るサウンド哲学は、紛れもなくアメリカのものです。
結論:買うことをおススメできるか?

エンジニアとしての私の結論から言うと、**『多くの人にとって、自信をもっておススメできる』**です。
その理由は、製品開発における「品質・価格・性能のバランス感覚」が非常に優れているからです。多くのメーカーは、この3つの要素のどれかを犠牲にしがちですが、JBLは各価格帯で非常に巧みな落としどころを見つけています 。
私自身、オーディオに詳しくない友人や家族に「最初のワイヤレスイヤホン、何がいい?」と聞かれたら、よくJBLのミドルレンジモデルを勧めます。なぜなら、大きな失敗がなく、多くの人が「良い音だ」と感じるサウンドを手頃な価格で体験できるからです。これは、製品の品質ターゲット設定が非常に優れている証拠と言えるでしょう。エントリーモデルからハイエンドモデルまで幅広いラインナップを揃えているのも、あらゆるユーザー層の期待に応えようとする成熟したブランドの自信の表れです 。
このメーカーのおすすめ製品は?

JBLのイヤホンは多種多様ですが、大きく分けて「エントリー」「ミドルレンジ」「ハイエンド」の3つのクラスで考えると非常に分かりやすいです。それぞれのクラスで、私がエンジニア目線で「これは!」と思ったモデルを紹介します。
JBL おすすめイヤホン比較表
| モデル (Model) | 価格帯 (Price Tier) | 主な特徴 (Key Feature) | ノイズキャンセリング (ANC) | バッテリー (ケース込み) | 防水性能 (IP Rating) | こんな人におすすめ (Best For) |
| JBL Wave Buds | エントリー | 高コスパ、JBLサウンドを手軽に体験 | – | 最大32時間 | IP54 (イヤホン) | 初めての完全ワイヤレスで、音質と価格のバランスを重視する人 |
| JBL Tune Flex | エントリー | 2-Wayデザイン(オープン/密閉型) | 〇 (効果は限定的) | 最大32時間 | IPX4 | 装着感にこだわりたい、カナル型の圧迫感が苦手な可能性がある人 |
| JBL Live Free 2 | ミドルレンジ | 高性能ANC、マルチポイント、Qi充電 | 〇 (リアルタイム補正) | 最大35時間 | IPX5 | 機能性と音質を高いレベルで両立させたい、コスパ最強を求める人 |
| JBL Tour Pro 3 | ハイエンド | スマートディスプレイ搭載充電ケース | 〇 (リアルタイム補正) | 最大40時間 | IPX5 | 最新ガジェットが好きで、最高の機能性と所有感を求める人 |
エントリーモデル (5,000円~1万円前後)
- JBL Wave Buds まさに「JBL入門」に最適なモデル。5,000円台から購入可能でありながら、JBLのDNAである迫力ある低音「JBL Pure Bassサウンド」をしっかりと感じられます 。フタのないユニークなケースは好みが分かれますが、イヤホンの取り出しやすさは抜群。初めてのワイヤレスイヤホンで失敗したくない方に最適な一台です 。
- JBL Tune Flex 非常にユニークな「2-in-1」モデルです。イヤーピースを付け替えることで、周囲の音が聞こえやすい開放的な「オープン型」と、遮音性が高く音楽に集中しやすい「密閉型(カナル型)」を切り替えられます 。ノイズキャンセリングの効果は限定的との声も多いですが、この柔軟性は大きな魅力です 。内部の基盤が見えるスケルトンデザインも、ガジェット好きの心をくすぐります 。
ミドルレンジ (1万円~2万円台)
- JBL Live Free 2 私が「ミドルレンジの王様」と呼びたい一台です。1万円台という価格で、上位モデルに迫るリアルタイム補正機能付きノイズキャンセリング、PCとスマホなどを2台同時に接続できるマルチポイント機能、そして置くだけで充電できるワイヤレス充電(Qi)まで搭載しています 。音質、機能、価格のバランスが完璧に近く、多くの人にとっての最適解になりうる、非常にコストパフォーマンスに優れたモデルです 。
ハイエンド (3万円以上)
- JBL Tour Pro 3 JBLの技術力と遊び心が詰まったフラッグシップモデル。最大の特徴は、充電ケースに搭載されたタッチスクリーン付きの「スマート充電ケース」です 。スマートフォンアプリを開かなくても、このディスプレイから設定変更や曲操作が直感的に行えます。音質はもちろん、ノイズキャンセリング性能も強力。まさに「全部入り」を求めるガジェット好き、オーディオ好きのための特別な一台です 。
このメーカーの製品はよい製品か?

JBLの製品がなぜ多くの人に支持されるのか、その核となる技術と思想をエンジニアの視点から解説します。
サウンドの核:「JBL Pure Bassサウンド」とは?
JBLのイヤホンを語る上で欠かせないのが「JBL Pure Bassサウンド」というキーワードです。これは単に低音が強く響く「ドンシャリ」とは一線を画します。技術的には、良質なダイナミックドライバー(モデルにより5.8mmから10mm超まで様々)を用い、パワフルでインパクトのある低音域を再生しつつも、ボーカルなどの中音域やシンバルなどの高音域のクリアさを犠牲にしないサウンド設計を指します 。
コンサートホールやライブ会場で、体に響くような低音を体験したことがあると思います。JBLはその「ライブ感」や「グルーヴ感」をイヤホンで再現することを目指しており、これが長年プロ音響の世界で培ってきたノウハウの賜物なのです 。
価値を高める主要技術
JBLはサウンドだけでなく、使い勝手を向上させるための技術も積極的に採用しています。
- ノイズキャンセリング (ANC): 上位モデルに搭載される「リアルタイム補正機能付きハイブリッドノイズキャンセリング」は、複数のマイクで周囲の騒音を常に監視・分析し、その状況に最適な打ち消し信号をリアルタイムで生成する高度な技術です 。これにより、電車内やカフェなど、場所を選ばずに高い没入感を得られます。
- マルチポイント接続: PCでオンライン会議中にスマートフォンの着信に応答したり、タブレットで動画を観た後にスマホの音楽を聴いたりと、2台のデバイス間をシームレスに切り替えられる機能です 。一度この便利さを体験すると、非対応のイヤホンには戻れなくなるほど、日々のストレスを軽減してくれます。
- JBL Headphonesアプリ: JBLのイヤホンは、専用アプリと連携することで真価を発揮します。詳細なイコライザー(EQ)調整で自分好みの音質にカスタマイズしたり、ボタン操作を割り当てたり、そして何より重要なのがファームウェアのアップデートです 。発売後も機能改善や不具合修正が行われる可能性があり、製品を長く、より快適に使い続ける上で欠かせない要素です。
JBLの製品が良いと言える大きな理由の一つは、かつては高級機だけのものだったこれらの先進的な機能を、積極的にミドルレンジやエントリーモデルにまで展開している点です。これにより、多くのユーザーが高品質なオーディオ体験を手頃な価格で享受できるようになっており、市場全体の基準を引き上げる役割も担っています。
このメーカーの生産地(工場)はどこか?

現代のほとんどの主要な家電メーカー(AppleやSonyなど)と同様に、JBL製品の生産もグローバル化されています。具体的な工場の場所は企業秘密として公開されていませんが、製品の箱を見ると「Made in China」や「Made in Vietnam」といった表記がされていることがほとんどでしょう。
過去にはアメリカの工場をメキシコに移転したという情報もありますが 、これはグローバルなサプライチェーン戦略の一例です。
ここでエンジニアとして強調したいのは、「どこで組み立てられているか」よりも、「どこで設計・開発されているか」が製品の本質を決定づけるという点です。製品の品質や性能を司る頭脳は、製造工場ではなく、次に述べる開発拠点にあります。
設計はどこで行っているか?

JBL製品の心臓部、つまり研究開発(R&D)、音響設計、エンジニアリングが行われているのは、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス郊外のノースリッジにあるハーマンの巨大な研究開発施設です 。
ここは単なるオフィスではありません。JBLの75年以上にわたる歴史と技術、膨大な音響データが蓄積された「聖地」とも言える場所です。JBLのサウンドは、このカリフォルニアの地で生まれています。ハーマングループとして、日本国内にも自動車関連の部品開発拠点などは存在しますが 、私たちが楽しむイヤホンやスピーカーの音響設計の核は、このノースリッジが担っています。
品質は大丈夫か?

「品質」と一言で言っても、それは「耐久性」「性能の安定性」「製造上のばらつきの少なさ」など、様々な要素を含みます。私の経験上、JBLの品質は**「価格を考えれば非常に良好だが、注意点もある」**というのが正直なところです。
物理的な品質と耐久性
JBLは製品の耐久性にも配慮した設計を行っています。
- 素材: モデルによっては、航空機の窓などにも使われる、耐衝撃性や耐熱性に優れたポリカーボネートを採用しており、堅牢性を高めています 。
- 防水防塵性能 (IP規格): これは製品の耐久性を客観的に示す重要な指標です。
- IPX4: あらゆる方向からの水の飛沫に耐えるレベル。汗や小雨なら十分です 。
- IPX5: あらゆる方向からの水の噴流に耐えるレベル。ジムでの激しい汗も安心です 。
- IP68: これは「防塵・防水」における最高等級の一つです。粉塵の侵入を完全に防ぎ、継続的な水没にも一定時間耐えられます 。スポーツ向けの「Endurance」シリーズにこの等級を採用しているのは、JBLが高い耐久性を意図して設計している明確な証拠です。
JBLの品質を理解する上で重要なのは、製品ラインごとに品質設計の思想が異なるという点です。スポーツ向けの「Endurance」シリーズは過酷な環境での使用を前提に物理的な耐久性を最優先に設計されています 。一方で、多機能なハイエンドモデルは、その複雑さゆえに、物理的な頑丈さとは別のソフトウェアやセンサー部分で不具合の報告が見られることもあります 。これは、どの性能を優先して設計するかのトレードオフの結果と言えます。
【最重要】品質を確保するための注意点:模倣品
非常に重要な注意点として、JBLは人気ブランドゆえに**模倣品(偽物)**が市場に多く出回っています 。特にオンラインの非正規販売店などで見られます。「アプリに接続できない」「音が異常に悪い」「ノイズキャンセリングが効かない」といったレビューは、偽物を購入してしまったケースが少なくありません。
JBL本来の品質を体験するためには、必ず公式サイトや正規販売店、信頼できる大手家電量販店から購入することが絶対条件です。
このメーカーの製品は買っても大丈夫?評判は?

ここでは、実際に製品を使ったユーザーの生の声、つまり「評判」を見ていきましょう。どんな製品にも良い点と悪い点があります。両方を知ることで、自分に合った製品かどうかが判断できます。
良い口コミ
- 圧倒的なサウンド、特に低音: 最も多いのが音質、特にJBLらしい迫力ある低音への高評価です。「ライブ会場にいるみたい」「低音がしっかりしているのにボーカルが埋もれない」といった、音楽を楽しく聴けるサウンドであることが支持されています 。
- 優れたコストパフォーマンス: 「この価格でこの音質と機能はすごい」という、コストパフォーマンスを称賛する声が非常に多いです 。特に1万円台のミドルレンジモデルでこの傾向が顕著です。
- 快適な装着感: モデルにもよりますが、「長時間つけていても疲れない」「走ってもズレない」など、フィット感に関する良い評価も多数あります 。
- 多機能で便利なアプリ: イコライザーで自分好みの音に細かく調整できる点や、各種設定の便利さを評価する声も多いです 。
- 先進的な機能: ハイエンドモデル「Tour Pro 2」のスマートケースは、「ガジェットとして面白い」「スマホを取り出さずに操作できて便利」と、新しい体験として高く評価されています 。
悪い口コミ
- モデルによる性能差: エントリーモデルのノイズキャンセリングは「おまけ程度」「効果が感じられない」という厳しい意見があります 。これは価格相応の部分であり、高性能を期待するならミドルレンジ以上のモデルを選ぶ必要があります。
- 接続の不安定さ: 一部のユーザーからは「Bluetoothが途切れる」「特定のデバイスとの相性が悪い」といった報告があります 。これはワイヤレス製品全般に起こりうることですが、気になる方は購入前にレビューを確認しておくと良いでしょう。
- 物理的な使いにくさ: 「ケースからイヤホンが取り出しにくい」 や、「スケルトンデザインのケース内部にホコリが入って気になる」 といった、デザインに起因する細かい不満点も見られます。
- 【要注意】特定のモデルの重大な不具合: 特に、ハイエンドモデルのJBL Tour Pro 2については、一点、安全に関わる重要な指摘があります。ケースのディスプレイがポケット内などで誤タップされ、「イヤホンを探す」機能が作動してしまうことがあるという報告です 。この機能はイヤホンから大音量の警告音を鳴らすため、 装着中に誤作動すると耳にダメージを与えかねません。これは設計上の配慮不足と言わざるを得ない重大な欠点です。このモデルを使用する際は、ケースの画面ロック機能を活用するなど、誤操作には十分な注意が必要です。
まとめ

最後に、この記事の要点をまとめます。
- JBLはどこの国? アメリカ発のブランドです。音響設計の魂はアメリカ・カリフォルニアにあり、現在は韓国のサムスン電子グループの一員として、グローバルに製品を展開しています。
- 品質は大丈夫? 価格帯に応じた適切な品質設計がされており、コストパフォーマンスは非常に高いです。スポーツモデルは高耐久、多機能モデルは利便性を重視しています。ただし、人気ブランドゆえの模倣品と、一部モデルの特有の不具合には注意が必要です。正規販売店での購入が鉄則です。
- おすすめできる? 自信をもっておすすめできます。特に、躍動感あふれる「ライブのようなサウンド」が好きな方には、間違いなく素晴らしい音楽体験を提供してくれるでしょう。用途と予算に応じて選べる豊富なラインナップが魅力で、もし迷ったらミドルレンジの「Live Free 2」が機能と価格のバランスが取れた万能な一台です。
JBLは、75年以上の歴史に裏打ちされた確かな音響技術をベースに、現代のニーズに合わせた多機能な製品を、見事なコスト感覚で市場に送り出している優良メーカーです。
この記事が、あなたのイヤホン選びの参考になれば幸いです。

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