大手FAメーカーの最新PLCが出揃いました!
「新しい装置のPLC、結局どれを選べばいいんだろう…」 「三菱、オムロン、キーエンス、それぞれ思想が違うのはわかるけど、自分の現場に最適な一台がわからない」
FA業界で働くエンジニアなら、誰もが一度はPLC選定の壁にぶつかったことがあるのではないでしょうか。カタログスペックを眺めても、各社の「良いこと」しか書かれておらず、リアルな違いは見えてきません。
こんにちは!FAソリューションを日々リサーチしているろぼてくです。 この記事では、2025年2月に発表され、業界の注目を集める三菱電機の新世代機””「MELSEC MXコントローラ」を中心に、オムロンの「SYSMAC NXシリーズ」、そしてキーエンスの「KV-Xシリーズ」””という、日本のFA市場を牽引する三強のPLCを、徹底的に比較・解説します。
単なるスペック比較ではありません。各社の””思想、リアルな現場の声、そして見落としがちなTCO(総所有コスト)””まで深掘りし、この記事を読み終える頃には、あなたの会社、あなたの現場に本当にフィットする一台が見つかるはずです。
- 某電機メーカーエンジニア
- エンジニア歴10年以上


各社の最新コントローラが出揃いました。各社の特徴を深ぼっていきたいとおもいます。
比較の前に知るべき!国内PLCシェアと3社の立ち位置


まず、現在の日本国内におけるPLC市場の力関係を把握しておきましょう。
- 1位:三菱電機(推定シェア50%以上) 長年にわたりトップに君臨する「王者」。圧倒的な納入実績と、MELSECに慣れた膨大な数の技術者の存在が、何よりの強みです。
- 2位グループ:オムロン、キーエンス オムロンは「統合制御」という独自の思想で、キーエンスは「高性能と手厚いサポート」で、それぞれ確固たる地位を築き、三菱の牙城に迫っています。
この「三菱が標準」という市場構造が、あなたのPLC選びにどう影響するのかも、重要な判断材料となります。



PLCに関するネットの情報を漁っても、やはり三菱電機MELSECの情報が一番多いです。強力なネットワーク効果を築いています。
【ひと目でわかる】主力PLCプラットフォーム比較表


まずは、各社の主力PLCの思想と特徴を一覧で比較してみましょう。
比較項目 | 三菱電機 MELSEC MXコントローラ | オムロン SYSMAC NXシリーズ | キーエンス KV-Xシリーズ |
---|---|---|---|
コンセプト | ハイブリッド統合型 (既存資産活用 + 新統合CPU) | フル統合型 (ワンソフトウェア・ワンネットワーク) | 最高性能特化型 (超高速CPU + 高性能専用ユニット) |
アーキテクチャ | 既存iQ-R/Fユニットを活かしつつCPUを統合 | 制御と情報を完全に一元化 | CPUと専門機能を分離し、各々の性能を最大化 |
CPU性能 (基本命令) | 0.98ns~(iQ-R R120CPU) | 非公開 (制御周期で評価) | 0.96ns (業界最速クラス) |
モーション制御 | CPU統合 (最大256軸) | CPU統合 (最大256軸) | 専用ユニット (周期62.5µs~) |
IoT/IT連携 | OPC UA標準搭載 | OPC UA, MQTT, SQL DBネイティブ対応 | 専用ユニットで対応 |
ソフトウェア | GX Works3 | Sysmac Studio | KV STUDIO |
ライセンス形態 | シートライセンス (サイトライセンスもあり) | シートライセンス | サイトライセンス (事業所内 無制限) |
安全制御 | 連携型 (安全CPU/コントローラ) | 統合型 (Safety over EtherCAT) | 分離型 (専用安全コントローラ) |



各社けっこう似たりよったり感があります。そんな中で10年前にこのコンセプトを確立していたオムロンの先見性には驚嘆です・・・
思想から紐解く!3社の特徴と「リアルな声」


比較表の背景にある、各社の「思想」と、実際に使うエンジニアから聞こえてくる「リアルな声」を深掘りします。
三菱電機:王者の選択 – 安定と進化の「ハイブリッド統合」
MXコントローラは、既存ユーザーを誰一人取り残さない、王者ならではの現実的な進化を遂げたPLCです。
- 特徴と強み: 最大の強みは、膨大な納入実績を誇るiQ-R/FシリーズのI/Oユニットや電源をそのまま流用できる点。CPUを載せ替えるだけで、配線や資産を活かしつつ、最新の統合制御アーキテクチャへ移行できます。これは、設備更新のリスクとコストを最小限に抑えたい企業にとって、絶大なメリットです。
- 現場の声(メリット): 「なんだかんだ言って、使い慣れた三菱が一番。トラブルがあってもネットで検索すれば大抵の情報は見つかる」 「既存のI/Oが使えるのは本当に助かる。盤内の改造を最小限にできるから、工期も短くできる」
- 現場の声(デメリット): 「GX Works3は多機能だけど、正直言って動作が重いし、画面構成が直感的じゃないと感じることがある」 「モーション設定は結局MT Works2の知識も必要で、オムロンほどシームレスじゃない」
三菱電機MXコントローラのより詳細な情報は以下で解説しています。


オムロン:未来を描く – 「フル統合」とオープン化の革命
NXシリーズは、「制御盤の中をシンプルに」という理想を追求し、FAの未来像を提示し続ける革新的なPLCです。
- 特徴と強み: 制御と情報を完全に一元化する””「Sysmac Studio」が核。PLC、モーション、安全、HMI、ビジョンまで、全ての機器を単一のソフトで開発できます。マシン制御にはオープンな「EtherCAT」””を採用し、IT連携機能(SQL DB直接接続など)は3社で最も強力です。
- 現場の声(メリット): 「Sysmac Studioの3Dシミュレーションはすごい。実機がなくても、PC上でメカの動きと連動させてデバッグできるから、立ち上げがめちゃくちゃ早くなった」 「安全回路の配線が劇的に減って、盤内がスッキリした。設計もデバッグも楽になった」
- 現場の声(デメリット): 「従来のラダーに慣れていると、変数ベースのプログラミングに戸惑う。学習コストは正直高い」 「ソフトが高機能な分、それなりのスペックのPCじゃないと快適に動かない」
キーエンス:成果を出す – 圧倒的性能と「生産性の追求」
KV-Xシリーズは、「速さ」と「使いやすさ」で、エンジニアの課題解決に貢献する超実践的なPLCです。
- 特徴と強み: 0.96nsという業界最速クラスのCPU性能もさることながら、最大の武器は開発効率を劇的に向上させる機能群。複雑な演算をラダー内に数行で書ける””「KVスクリプト」や、同一事業所内なら何台でもインストール可能な「サイトライセンス」””は、開発のTCO(総所有コスト)を大幅に削減します。電話一本で駆けつけてくれる手厚いサポートも健在です。
- 現場の声(メリット): 「KVスクリプトは一度使うとやめられない。今まで何十行もラダーを書いていた通信処理が、数行で終わる」 「サイトライセンスは神。設計も製造も、新入社員も、ライセンス数を気にせずソフトを使える環境は、開発効率を本当に上げてくれる」
- 現場の声(デメリット): 「性能はピカイチだけど、やっぱり価格は高い。その価値を上層部に説明するのが大変」 「キーエンスのセンサやビジョンと組み合わせると最強だけど、気づくと全部キーエンス製品になってる(笑)」


あなたの現場はどれ?ケース別・最適PLC診断


さて、いよいよあなたの現場に最適な一台を選びましょう。以下の質問に当てはまるものはどれですか?
- Q1. 既存の三菱製設備を、低コスト・低リスクで更新したい
- A. → 三菱電機 MELSEC MXコントローラ 既存のI/O資産と技術者のスキルを活かせるMXコントローラが、最も合理的で賢明な選択です。
- Q2. IT部門と連携し、DXに対応した次世代の新規装置をゼロから開発したい
- A. → オムロン SYSMAC NXシリーズ SQL DBへの直接接続など、IT親和性の高さは他を圧倒します。未来のスマートファクトリーを見据えるなら、最適な投資となるでしょう。
- Q3. 装置の処理速度が競争力に直結する。開発期間も短縮したい
- A. → キーエンス KV-Xシリーズ 圧倒的な性能と、開発者の生産性を最大化する思想は、ビジネスの「スピード」と「成果」に最も貢献します。TCOを考えれば、価格以上の価値があります。
まとめ:最高のPLCとは、あなたの会社の「性格」に合った一台である


今回の比較で明らかになったのは、三者三様の明確な哲学でした。
- 三菱電機: 巨大な既存資産を守り、着実に進化する「安定」の道。
- オムロン: 未来の工場を理想から描き、FAとITを完全に融合する「革新」の道。
- キーエンス: エンジニアの時間を最も価値あるものと考え、成果と生産性を最大化する「実践」の道。
絶対的に優れたPLCは存在しません。あなたの会社の文化、エンジニアのスキル、そして何よりも「何を最も重視するか」という会社の“性格”が、選ぶべき一台を教えてくれます。
この記事が、あなたのPLC選定という難しい旅の、確かな羅針盤となれば幸いです。まずは各社の公式サイトで詳細を確認したり、デモ機を依頼して、その思想に直接触れてみてください。
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