この記事のポイント
ダイアログセミコンダクターの企業分析がわかります。
結論:ルネサスとの良い補完関係となる良い買収です!
ダイアログセミコンダクターの概要
ダイアログセミコンダクターはイギリスの半導体メーカーです。
イギリスの半導体メーカーは珍しいですね!
会社名 | Dialog Semiconductor |
業界 | 製造業・半導体 |
本社 | レディング(英国) |
設立 | 1985年 |
CEO | Jalal Bagheli |
年間売上 | 1566 百万USドル(2019年) |
営業利益 | 379 百万USドル(2019年) |
従業員数 | 1850人 |
親会社 | ルネサスエレクトロニクス |
2021年2月に日本のルネサスエレクトロニクスが買収を発表して、日本では有名になりました。
営業利益率は24%で稼ぐ力は製造業としては高いです。
ファブレス企業であり、製造は行っていません。
ファブレスであることが高利益の1つの要因なのでしょう。
半導体メーカーランキング
2022年の世界の半導体メーカー売上ランキングを示します。(単位:百万USドル)
順位 (2022) | 順位 (2021) | 企業名 | 国 | 主力製品 | 売上 (2022) | シェア (2022) | 売上 (2021) | 成長率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | Samsung Electronics | 韓国 | メモリ | 65,585 | 10.9% | 73,197 | ▼10.4% |
2 | 2 | Intel | 米国 | プロセッサ | 58,373 | 9.7% | 72,536 | ▼19.5% |
3 | 3 | SK hynix | 韓国 | メモリ | 36,229 | 6.0% | 37,192 | ▼2.6% |
4 | 5 | Qualcomm | 米国 | プロセッサ | 34,748 | 5.8% | 27,093 | 28.3% |
5 | 4 | Micron Technology | 米国 | メモリ | 27,566 | 4.6% | 28,624 | ▼3.7% |
6 | 6 | Broadcom | 米国 | 通信IC | 23,811 | 4.0% | 18,793 | 26.7% |
7 | 10 | AMD | 米国 | プロセッサ | 23,285 | 3.9% | 16,299 | 42.9% |
8 | 8 | Texas Instruments | 米国 | アナログIC | 18,812 | 3.1% | 17,272 | 8.9% |
9 | 7 | MediaTek | 台湾 | プロセッサ | 18,233 | 3.0% | 17,617 | 3.5% |
10 | 11 | Apple | 米国 | プロセッサ | 17,551 | 2.9% | 14,580 | 2.1% |
– | – | その他合計 | – | – | 277,501 | 46.1% | 271,749 | 20.4% |
この表からわかるように、世界の半導体メーカーの中において、ダイアログセミコンダクターは中規模~小規模に該当する半導体メーカーです。
規模が分かりやすいように日本の半導体メーカー売上ランキングを示して、イメージを掴んでみたいと思います。(各社の半導体部門の売上)
順位 (2021) | 企業名 | 国 | 主力製品 | 売上 (2021) | 売上 (2020) | 成長率 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | KIOXIA | 日本 | メモリ | 12,948 | 10,758 | 20.4% |
2 | ルネサスエレクトロニクス | 日本 | プロセッサ | 99,35 | 67,12 | 48.0% |
3 | ソニーセミコンダクタ | 日本 | メモリ | 89,09 | 87,10 | 2.3% |
4 | ローム | 日本 | プロセッサ | 32,66 | 26,79 | 21.9% |
5 | 東芝 | 日本 | メモリ | 29,71 | 25,52 | 16.4% |
6 | 日亜化学 | 日本 | 通信IC | 23,39 | 20,99 | 6.7% |
7 | 三菱電機 | 日本 | プロセッサ | 19,44 | 15,78 | 15.9% |
8 | サンケン電気 | 日本 | アナログIC | 13,62 | 12,37 | 10.1% |
9 | 富士電機 | 日本 | プロセッサ | 13,22 | 10,86 | 21.7% |
10 | ソシオネクスト | 日本 | プロセッサ | 11,06 | 8,42 | 31.4% |
日本の半導体メーカーと比べると、ダイアログセミコンダクターはのサンケン電気や三菱電機の半導体部門と同等レベルの売上ということがわかります。
日本の東証プライムレベルの会社であることはわかりますね。
事業ポートフォリオ
事業としては、アナログ半導体の開発・設計・販売を行う会社となります。
メインの半導体事業ポートフォリオは以下です。
- パワーマネジメント(アナログ)
- コネクト(通信)
- コンフィギュラブル・ミックスドシグナル
そのほかにも多岐にわたる事業を手掛けていますが、ルネサスが得意なマイクロプロセッサ事業は保有していないので、ルネサスとは良い補完関係になります。
一時期はAppleのiPhone、iPad、Apple Watchの電源管理ICの独占サプライヤーでありDialogの売上の74%をAppleが占めたこともありました。
製品ラインナップ
具体的な製品群は以下となります。アナログICや通信ICに強みを持っていますね。
- バッテリー&パワーマネジメント
- パワーコンバージョン
- コンフィギュラブル・ミックスドシグナル
- LEDドライバ
- BLE
- WiFi
バッテリー&パワーマネジメントICでは日清紡(旧リコー)等がライバルですね。
半導体メーカーの中でのダイアログセミコンダクターの特徴
事業ポートフォリオや製品群からもわかるように、パワーマネジメントのアナログICや無線通信関連ICに強みを持っています。特に低消費電力に強みを持っているようです。
ニッチで面白い製品は、コンフィギュラブルミックスドシグナルIC製品を有している点です。これはいわゆるFPGA(Field Programable Gate Array)製品です。大規模FPGAはIntel(旧ALTERA)やAMD(旧Xilinx)が有名ですが、小規模FPGAやアナログのコンフィギュラブルICの製品を有しているのは、独自の強みと言えます。
コンフィギュラブルミックスドシグナルIC技術は、ダイアログが米国のSilego Technologyの買収によって得たと考えられます。
ルネサスの強みである組み込み用マイクロプロセッサとよく一緒に使われるのが小規模FPGAです。この技術もルネサスの主力事業との相乗効果はかなり高いと考えます!
ルネサスによる買収・その狙い
ルネサスからのプレスリリースでは、以下のように述べられています。
- Dialog社の低電力技術によりIoT分野での提供範囲・能力を拡大
- コネクティビティ技術でルネサスのシステムソリューションを差異化
- エンジニア陣および設計開発技術を拡充し、新製品の市場投入を効率化
- 売上・利益の拡大とコスト節減
【引用】URL:https://www.renesas.com/jp/ja/about/press-room/renesas-and-dialog-semiconductor-join-forces-advance-global-leadership-embedded-solutions
ろぼてくの見解
ルネサスは近年アナログ・通信関連の技術獲得に精力的です。これはルネサスの主力顧客である自動車・産業機器のさらなる電子化・IoT化が進むことを見越しての戦略と思われます。
IoT:Internet of Thingsの略。モノのインターネット。すべてのモノがインターネットに接続され、すべてのモノにアクセス・情報収集ができるようになることを指しています。
特に自動車の電子化・IoT化では、低消費電力、無線通信技術が必要不可欠な技術です。ダイアログはその特徴を持った製品群を有しているため今回の買収に至ったと考えられます。
また、他ではあまり語られていませんが、小規模FPGA事業もルネサスのメイン製品のマイコンとの相乗効果は大きいと私は考えています。
現状のルネサスの自動車・産業分野で非常に強いマイクロプロセッサ技術とダイアログのアナログ・通信技術が上手く融合することができれば、より自動車・産業分野におけるルネサスの地位が向上し、さらなる成長が期待できると考えます。
さいごに
今回はルネサスが近年買収を行ったダイアログセミコンダクターの企業分析とルネサスの買収意図を解説しました。
皆さんの企業分析のお助けになれば幸いです。
コメント