はじめに:なぜ、プログラミング教育に「家庭の方針」が必要なのか?
「2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されたけど、うちの子は大丈夫だろうか?」 「学校の授業だけで、これからの時代を生き抜く力が本当に身につくの?」 「AIに仕事が奪われるって聞くし、何か特別なことをさせないと…」
こんにちは!現役エンジニアで、一児の父でもある「ろぼてく」です 。このブログ「ファミプログ」を運営していると、保護者の皆さんから、このような期待と不安が入り混じった声をたくさんお聞きします。
そのお気持ち、痛いほどよく分かります。実際、ある調査では、保護者の8割以上が「プログラミングは将来役に立つ」と考えている一方で、3割以上の人が「自分の子どもが授業についていけるか不安」「学校の授業だけで良いのか不安」と感じているというデータもあります 。さらに深刻なのは、実に6割以上の保護者が、学校で一体何が教えられているのかを「あまり知らない」「全く知らない」と回答していることです 。
大切だと分かっている。でも、何をどうすればいいのか分からない。この「情報と理解のギャップ」こそが、漠然とした不安の正体ではないでしょうか。
この不安を解消するために、高価なプログラミング教室に駆け込んだり、難しい専門書を買い与えたりする必要は、必ずしもありません。現役のエンジニアとして、そして皆さんと同じ親として、私がたどり着いた結論は、もっとシンプルです。それは、ご家庭の中に、ブレない「教育方針」という名のコンパスを持つこと。
そして、我が家の方針はたった一つ。
「プログラミングは『勉強』じゃない。最高の『遊び』だ。」
この考え方を軸にすることで、子どもは自ら学び始め、親の不安は子どもの成長を見守る「ワクワク」に変わります。この記事では、AI時代を見据え、我が家がプログラミング教育で大切にしている3つの原則を、私のエンジニアとしての知識と、父親としての実体験を交えながら、余すところなくお伝えします。
この記事を読み終える頃には、皆さんの心の中にあるモヤモヤした霧が晴れ、お子さんと一緒にプログラミングという冒険の旅に出る、確かな一歩を踏み出せるはずです。
- 現役エンジニア
- スクラッチ歴4年
- 2児パパ

大前提:そもそも「プログラミング教育」の本当の目的とは?

我が家の3つの原則をお話しする前に、どうしても共有しておきたい大前提があります。それは、国(文部科学省)が定める「プログラミング教育」の本当の目的です。ここを誤解してしまうと、せっかくの取り組みが、親子にとって大きな負担になりかねません。
結論から言うと、文部科学省が目指しているのは、すべての子どもをプロのプログラマーにすることでは全くありません 。特定のプログラミング言語(例えばPythonやJavaなど)の文法を暗記させたり、高度なコーディング技術を習得させたりすることが目的ではないのです 。
では、本当の目的は何か?それは、**「プログラミング的思考(プログラミング・シンキング)」**を育むことです 。
「また難しい言葉が出てきた…」と思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません。プログラミング的思考とは、一言でいえば**「目的を達成するために、物事を分解し、論理的に考える力」**のことです。
例えば、夕食にカレーライスを作る場面を想像してみてください。
- 目的: 美味しいカレーライスを作る。
- 分解: そのためには何が必要?
- 材料(肉、野菜、カレールー)を揃える。
- 道具(鍋、包丁、おたま)を用意する。
- 手順(野菜を切る→肉を炒める→煮込む→ルーを入れる)を考える。
- 論理的な組み立て:
- 「野菜を切る」前に「野菜を洗う」必要がある。
- 「煮込む」時間は、野菜が柔らかくなるまで。
- 「ルーを入れる」のは、火を止めてからの方がダマになりにくい。
この、目的を達成するために必要な要素を洗い出し、最適な順番に並べ替えていく思考プロセスそのものが、「プログラミング的思考」なのです 。
学校教育では、この考え方を様々な教科の中で体験的に学びます。例えば、算数で正六角形を描く際に、「60度曲がって、まっすぐ進む」という命令を6回繰り返すプログラムを作ることで、正多角形の性質をより深く、体感的に理解する、といった具合です 。これは、単に分度器で描くよりも、図形の「構造」や「規則性」への理解が格段に深まります。
なぜ今、この力が「学習の基盤となる資質・能力」として重視されているのでしょうか 。それは、私たちの生活が、スマートフォンや家電、交通システムなど、無数のプログラムによって支えられているからです 。これらのテクノロジーをただ受け身で使うだけでなく、その裏側にある「仕組み」や「考え方」を理解し、主体的に社会に関わっていく人材を育てることが、国の大きな狙いなのです 。
ですから、親である私たちが「うちの子にPythonを教えなきゃ!」と焦る必要は全くありません。むしろ、日常生活の中に溢れている「プログラミング的思考」の種を見つけ、お子さんと一緒に楽しむこと。それが、国の教育方針の真意に沿った、最も効果的な家庭でのサポートなのです。
我が家の第一原則:「結果」より「試行錯誤のプロセス」を褒める

この大前提を踏まえた上で、我が家が最も大切にしている一つ目の原則をご紹介します。それは、「完璧な作品(結果)ができたこと」よりも、「うまくいかずに悩み、試行錯誤しているプロセスそのもの」を全力で認め、褒めることです。
娘がScratch(スクラッチ)というビジュアルプログラミング言語で、初めてゲーム作りに挑戦していた時のことです。ネコがジャンプして障害物を避ける、という単純なゲームでしたが、どうしてもジャンプの高さが足りず、すぐにゲームオーバーになってしまいます。
「なんでー!ちゃんと命令したのに!」 「もうヤダ!面白くない!」
コントローラーを投げ出しそうになった娘の横で、私は心の中でガッツポーズをしていました。なぜなら、これこそが最強の「学び」の入り口だからです。
プログラミングの世界では、エラーやバグ(プログラムの誤り)は「失敗」ではありません。それは「ヒント」であり、「データ」です。プログラムが思った通りに動かない時、子どもたちの頭の中では、すさまじい思考が繰り広げられています。
- 「何が原因だろう?」(問題発見)
- 「ジャンプの高さを変えるには、どのブロックの数字を大きくすればいいんだっけ?」(仮説設定)
- 「よし、この数字を『10』から『20』に変えてみよう」(試行)
- 「あ、今度は高く跳びすぎた。じゃあ『15』ならどうだ?」(検証と再試行)
この一連のサイクルは、まさに科学的な問題解決のプロセスそのものです 。そして、この苦しいけれど充実した格闘の時間こそが、テストの点数では測れない、しかしこれからの時代に決定的に重要となる**「非認知能力」**を爆発的に伸ばすのです 。
- 忍耐力・やり抜く力(グリット): すぐに諦めず、困難な課題に粘り強く取り組む力 。
- 問題解決能力: 複雑な状況を分析し、原因を特定し、解決策を導き出す力 。
- 自己肯定感・自己効力感: 自分の力で困難を乗り越えたという成功体験が、「自分ならできる!」という揺るぎない自信につながる 。
従来の教育では、間違いは減点対象であり、子どもたちは失敗を恐れがちです。しかし、プログラミングの世界では、失敗はゼロコスト。何度でも、すぐにやり直せます。この「安全な失敗」が許される環境が、子どもたちを挑戦へと駆り立てるのです。
では、この貴重な瞬間に、親は何をすべきでしょうか? 答えは、「答えを教えない」ことです。代わりに、思考を促す「問い」を投げかけます。
- 「お、どうしたの?どんな動きをさせたかったの?」
- 「なるほど、でも今はこう動いちゃったんだね。どこが違うんだろう?」
- 「このブロック、ちょっと変えてみたらどうなるかな?一緒に試してみようか!」
そして何より大切なのが、プロセスへの賞賛です。 「すごい!諦めずに色々な方法を試しているね!」 「さっきより、ちょっとだけ理想の動きに近づいたんじゃない?」 「その考え方、お父さんも思いつかなかったな。面白い!」
たとえ最終的に完璧なゲームが完成しなくても構いません。うまくいかないことに向き合い、自分の頭で考え、粘り強く試行錯誤した時間そのものが、子どもの中に一生モノの財産として蓄積されていくのです。プログラミングは、いわば「心の筋トレ」ができる、最高のジムなのです。
我が家の第二原則:「コードの先にある世界」を発見させる

二つ目の原則は、プログラミングをパソコンやタブレットの中だけで完結させず、**「コードの向こう側にある、現実世界とのつながり」**を一緒に発見することです。
多くの子どもたちにとって、プログラミングは「画面の中のキャラクターを動かす魔法」のように見えます。それは素晴らしい入り口ですが、学びをそこで止めてしまうのは非常にもったいない。なぜなら、プログラミング的思考の本当の価値は、それが現実世界に溢れる様々なシステムの「謎」を解き明かす鍵になる点にあるからです。
お子さんと一緒に、身の回りを見渡してみてください。
- どうして横断歩道の信号は、青から黄色、そして赤へと順番に変わるんだろう?
- 電子レンジは、なぜ「温め」ボタンを押すだけで、ちょうどいい温度にしてくれるんだろう?
- 自動販売機は、どうやってお金を認識して、正しいお釣りを計算しているんだろう?
これらはすべて、目には見えない精巧な「プログラム」によって制御されています 。この事実に気づいた瞬間、子どもの世界を見る目は一変します。テクノロジーの単なる「消費者(コンシューマー)」から、その仕組みに知的好奇心を抱く「分析者(アナリスト)」へと進化するのです。
この視点は、学校の勉強をより深く、面白くするためにも絶大な効果を発揮します。
- 算数 × プログラミング: 前述の通り、正多角形をプログラムで作図する活動は、角度や辺の長さ、繰り返し(ループ)といった概念を、身体で覚えるような感覚で理解させてくれます。これは、教科書を眺めているだけでは得られない、本質的な学びです 。
- 理科 × プログラミング: 「部屋が暗くなったら自動で明かりがつく」というプログラムを、光センサーを使って組んでみるとします。この体験は、「センサーが値を読み取る」「その値がある条件(例:100より小さい)を満たしたら(IF)、LEDを光らせる(THEN)」という条件分岐のロジックを学ぶと同時に、電気や光の性質への興味を強烈に刺激します 。
- 国語・生活科 × プログラミング: 「朝起きてから学校に行くまでの行動」をテーマに、インタラクティブな紙芝居を作ってみるのはどうでしょう。「もし寝坊したら、朝ごはんを抜かして、急いで家を出る」「もし雨が降っていたら、傘を持っていく」といった流れをプログラムで表現する作業は、物事を順序立てて整理し、条件に応じて行動を変化させるという、高度な論理的思考の訓練になります 。
このように、プログラミングを「教科の学びを深めるための道具」として捉えることで、子どもは知識の断片をつなぎ合わせ、自分なりの「意味」を見出すようになります。
彼らが普段夢中になっているゲームでさえ、学びの宝庫に変わります。「このキャラクターのジャンプ、どういう計算でプログラムされてるんだろう?」「敵の動きには、どんなパターンがあるんだろう?」そんな問いが自然に生まれるようになったら、しめたものです。
親の役割は、その「なんでだろう?」の芽を摘まず、一緒に面白がること。「確かに、どうなってるんだろうね?ちょっと調べてみようか」「もしかしたら、こんな仕組みかもしれないね。Scratchで真似して作ってみる?」と、子どもの好奇心を現実世界の探求へとつなげてあげる。
そうすることで、プログラミングは単なるスキルではなく、世界という壮大なシステムを読み解くための「万能言語」となるのです。
我が家の第三原則:AI時代を生き抜く「ユニークな創造性」を育む

そして、最後の三つ目の原則。これが、AIとの共存が当たり前になる未来において、最も重要になると私が確信していることです。それは、プログラミングを「ユニークな創造性を発揮するための表現ツール」として捉えることです。
「AIに仕事が奪われる」という言葉に、多くの人が不安を感じています 。しかし、エンジニアの視点から見ると、少し景色が違って見えます。AIが得意なのは、膨大なデータからパターンを見つけ出し、最適化し、決められたタスクを高速で実行することです。一方で、AIが苦手なのは、
「そもそも何を解決すべきか」という問いを立てること、前例のない全く新しいアイデアを生み出すこと、そして人の心を動かすような独自の表現をすることです 。
つまり、これからの時代に価値を持つのは、AIに代替されない、人間ならではの能力。その筆頭が**「創造性(クリエイティビティ)」**なのです。
ここで、プログラミングに対する見方を180度変えてみましょう。プログラミングは、ロジックを組み立てる科学的な側面と同時に、**絵の具や粘土、楽器と同じ、真っ白なキャンバスに自分のアイデアを形にするための、最強の「表現ツール」**でもあるのです 。
- 誰も見たことがないルールの、自分だけのオリジナルゲーム 。
- 自分の声や動きに反応して、形を変えるインタラクティブアート。
- おばあちゃんの薬の飲み忘れを防ぐ、シンプルなリマインダーアプリ。
これらはすべて、プログラミングという絵筆がなければ描けない、ユニークな作品です。そこには、決まった「正解」は存在しません 。あるのは、作り手の「こうしたい!」という情熱と、それを形にするための創意工夫だけです。
この「ゼロからイチを生み出す」経験こそが、AI時代に求められる創造性の核を育てます。下の表は、求められるスキルの変化と、プログラミングの「遊び」がどのようにその育成に貢献するかをまとめたものです。
| 旧時代に重視されたスキル | AI時代に求められるスキル | プログラミングの「遊び」でどう育つか |
| 指示通りの正確な実行 | 未知の問題への対応力・課題解決能力 | バグの発見と修正(デバッグ)を繰り返す中で、自ら仮説を立て、検証し、解決策を見つけ出す力が養われる 。 |
| 知識の暗記 | 批判的思考力・論理的思考力 | 目的達成のために、どの命令をどの順で組み合わせるか、常に論理的な構造を考える必要がある 。 |
| 標準化された成果物 | 創造性・独自の表現力 | ゲームや物語など、自分のアイデアをゼロから形にするプロセスそのものが創造性の訓練となる。「正解」がない中で自分だけの答えを作る 。 |
ある専門家は、これからの時代を生き抜く鍵は**「希少性」**にあると説いています 。それは、他の誰にも真似できない、自分だけの価値を持つことです。例えば、「100人に1人」レベルのスキルを3つ掛け合わせれば、100万人に1人の「レア」な人材になれる、と。
この考え方において、プログラミングは最強の「掛け算の要素」になります。
- 絵を描くのが好きな子 × プログラミング → 自分で描いたキャラクターが動くゲームやアニメーションを作れるクリエイターに。
- 音楽が好きな子 × プログラミング → 自分で作曲した音楽に合わせて変化するビジュアルアートを作れるアーティストに。
- 物語を考えるのが好きな子 × プログラミング → 読者の選択によって結末が変わるインタラクティブノベルを作れる作家に。
私たちの目標は、AIが書けるようなありふれたコードを書く「コーダー」を育てることではありません。プログラミングを自在に操り、自分の情熱やアイデアを、世界でただ一つの形として生み出すことができる**「クリエイター」**を育てることです。
親としてできるのは、子どもの「好き」という気持ちを尊重し、「それにプログラミングを組み合わせたら、もっと面白いことができるんじゃない?」と、可能性の扉をそっと開けてあげること。その子のユニークな情熱とプログラミングが出会った時、AIには決して真似できない、未来を切り拓くための創造性が花開くのです。
結論:最高の「遊び」こそが、お子さんの未来を拓く最強の「学び」になる

ここまで、AI時代を見据えたプログラミング教育において、我が家が大切にしている3つの原則についてお話ししてきました。
- 結果よりプロセスを: 完璧な作品よりも、うまくいかない時の試行錯誤を褒める。その格闘が、やり抜く力や問題解決能力といった、一生モノの非認知能力を育む。
- コードの先に世界を: パソコン画面の中だけでなく、身の回りの仕組みと結びつける。その好奇心が、あらゆる学びを深め、世界を読み解く力を養う。
- AI時代のために創造性を: 「正解のない問い」に挑戦させ、自分だけの表現を応援する。その情熱が、AIには代替不可能な、ユニークな価値を生み出す。
もうお分かりの通り、これらの原則に、難しい専門知識や高価な機材は必要ありません。必要なのは、プログラミングを「評価されるべき勉強」から「親子で楽しむ最高の遊び」へと、捉え直すほんの少しの勇気です。
子どもが夢中になってブロックを組み立てるように。 一心不乱に絵を描くように。
プログラミングもまた、子どもたちの知的好奇心と創造性を解き放つ、最高の「遊び」になり得ます。そして、この**「最高の遊び」こそが、変化の激しい未来を自分らしく、力強く生き抜くための「最強の学び」になる**と、私は信じています。
難しく考える必要はありません。まずはお子さんと一緒に、Scratchを開いて、ネコをちょっとだけ動かしてみる。そこから、すべてが始まります。
このブログのキャッチコピーは、「キミの『面白い!』が世界を変える!」です 。
お子さんが心から「面白い!」と感じるその瞬間を大切に、ぜひ親子でプログラミングという名の冒険を楽しんでみてください。その旅路を、私も一人のエンジニアとして、そして同じ親として、心から応援しています。
おススメのスクラッチ参考書
私も参考にしているスクラッチ参考書を紹介します。どちらもとてもわかりやすいです。
ろぼてく私の場合は、図書館で借りて試し読みして、分かりやすかったものを購入しています。試し読みは必須です。
手元にずっと置いておき、いつでも参照できるようにすることも重要です。
【無料体験】【全国に教室多数】おススメのプログラミング教室
私が最もおススメするプログラミング教室は、「QUREOプログラミング教室」です。
「QUREO」の特徴は、以下にあげる点です。
- 教室型であり、直接先生からプログラミングを学ぶことができる。
- 全国に教室数が多く(全国2500教室)、実績豊富
- ビジュアルプログラミングかつゲーム制作を学習教材に使用していて、取り組みやすい
- 月謝が比較的安い。



習い事は、「通いやすさ」と「続けやすさ」の2つが重要ですよね。私も「通いやすさ」を重視して「QUREO」を選びました。
今なら無料体験・キャンペーンも実施しているので、一度お試しすることをおススメします!










コメント