【完全網羅】MERRELL(メレル)はどこの国のメーカー?エンジニア視点で品質・設計・評判を徹底解剖!

目次

はじめに:足元のエンジニアリングへの招待

こんにちは、ブログ「親子プログラミング」を運営しているエンジニアブロガーの「ろぼてく」です。

普段、私は電気製品の設計開発や品質保証(QA)の現場に身を置いています。そこは0.01mmの寸法公差、材料の熱膨張係数、そして数千時間に及ぶ加速劣化試験データが支配する世界です。日々、「良い製品とは何か?」という問いと向き合っている私ですが、この職業病とも言えるエンジニアリング思考は、日常生活のあらゆるモノ選びにも発揮されてしまいます。

今回、徹底的にメスを入れるのは、アウトドアフットウェアの世界的ブランド**「MERRELL(メレル)」**です。

「キャンプでよく見かけるあのブランド、詳しくは知らないけれどどうなの?」

「デザインは個性的だけど、設計としての合理性はあるの?」

「雨の日に滑りやすいという噂は、技術的に見て本当なの?」

読者の皆様が抱くこれらの疑問に対し、カタログスペックをなぞるだけの表面的な解説はしません。企業の資本構造、生産工場の地政学的背景、採用されている材料の物性、そして製品寿命に関わる工法の違いに至るまで、あたかも私がこの製品の「技術適合性評価」を行うかのような深度で分析を行います。

たかがスニーカー、されどスニーカー。そこには、数多のエンジニアたちが「歩行」という物理現象を制御しようと試みた、設計思想の塊が存在します。このレポートを読み終える頃には、あなたの靴選びの基準は「デザイン」から「スペック」へと、劇的に解像度が上がっていることでしょう。

この記事を書いた人
  • 電機メーカー勤務
  • エンジニア歴10年以上
  • 品質担当経験あり
ろぼてく

結論:どこの国のメーカーか?

製品の品質を語る上で、その出自を知ることは極めて重要です。なぜなら、品質管理基準(QC工程)や設計思想は、その企業が育った国の文化や法規制、そして親会社の経営方針に色濃く影響を受けるからです。

結論から申し上げます。MERRELL(メレル)は、**「アメリカ合衆国」**のメーカーです。

1. ブランドの起源:バーモント州の職人魂とミシガン州の量産技術

MERRELLの歴史は、1981年にさかのぼります。創業の地は、アメリカ合衆国バーモント州。当時、カスタムハイキングブーツ職人として名を馳せていたランディ・メレル(Randy Merrell)氏の技術に、スキーブランド「ロシニョール」の幹部であったクラーク・マティス(Clark Matis)氏とジョン・シュバイツァー(John Schweizer)氏が注目したことから全ては始まりました。

  • Randy Merrell: 「北米で最も優れたハイキングブーツ職人」と称され、彼の作るブーツは手に入れるまで半年待ちという状態でした。彼の役割は、解剖学に基づいたラスト(木型)の設計と、長時間歩行でも疲れないブーツの理想形を提示することにありました。
  • Clark Matis & John Schweizer: 彼らはビジネスのスケーラビリティ(拡張性)を担いました。職人の一点モノを、いかに品質を落とずに量産ラインに乗せるか。ここに、MERRELLというブランドの初期のエンジニアリング課題がありました。

2. 資本の変遷と現在の立ち位置

エンジニアとして企業の安定性を見る際、私は「資本関係」を重視します。開発投資(R&D予算)の潤沢さは、親会社の規模に比例するからです。

創業後、MERRELLはいくつかの変遷を経ています。

  1. 1981年: ブランド設立。
  2. 1987年: フィンランドのスポーツブランド「Karhu(カルフ)」が買収。この時期に生産拠点のグローバル化(アジアシフト)が進み、コスト競争力を高める基礎が築かれました。
  3. 1997年: 靴業界の巨人**「Wolverine World Wide(ウルヴァリン・ワールド・ワイド)」**がMERRELLを買収。

現在、MERRELLはこのWolverine World Wide社の完全子会社であり、本社は親会社と同じ**アメリカ合衆国ミシガン州ロックフォード(Rockford, Michigan)**にあります。

3. 親会社「Wolverine World Wide」の技術的背景

親会社であるWolverine World Wideは、単なる投資会社ではありません。1883年創業の老舗フットウェアメーカーであり、以下のブランドを傘下に持つ巨大コングロマリットです。

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保有ブランド特徴・技術領域MERRELLへの技術的シナジー
Saucony (サッカニー)ランニングシューズ衝撃吸収素材、軽量化技術、生体力学(バイオメカニクス)の研究データ共有
Bates (ベイツ)ミリタリー・警察用ブーツ過酷な環境下での耐久性試験基準、MILスペック準拠の品質管理ノウハウ
Hush Puppies (ハッシュパピー)カジュアルレザーシューズ皮革素材の加工技術、コンフォートシューズの知見
Chaco (チャコ)スポーツサンダルストラップ構造、フィッティング技術
CAT Footwearワークブーツ安全靴(セーフティブーツ)における保護機能、耐摩耗性技術

このように、MERRELLは**「アメリカ資本」であり、かつ「軍事用から競技用まで網羅する巨大な技術ポートフォリオを持つ企業の基幹ブランド」**という位置づけになります。これは、製品開発において、単独ブランドでは持ち得ない規模のテストラボや素材調達網を利用できることを意味しており、品質の安定性に大きく寄与しています。


結論:買うことをおススメできるか?

エンジニアとして、このメーカーの製品への投資(購入)は「適正」と判断できるか?

私の回答は、**「極めて高い確率で『買い』である。ただし、使用環境の物理的特性を理解した上での選定が必要」**です。

1. 推奨する技術的根拠:コストパフォーマンスの高さ

私が製品を分解(ティアダウン)する視点で見たとき、MERRELLの靴は「BOMコスト(部品表コスト)の還元率」が非常に高いと感じます。

  • 部材の信頼性: エントリーモデルである1万円台の靴にも、イタリアのソールメーカーVibram(ビブラム)社のアウトソールや、**GORE-TEX(ゴアテックス)**メンブレン、**OrthoLite(オーソライト)**インソールといった、業界標準のトップティア部材を惜しみなく採用しています。
  • 設計の堅牢性: 後述する「ストロボ製法」や「ダブルステッチ」など、製造工程における手抜きが見られません。

これだけのスペックを積み上げながら、市場価格をこのレンジに抑え込んでいるのは、親会社Wolverine World Wideのバイイングパワー(大量調達によるコストダウン)の恩恵と言えるでしょう。

2. 「買い」ではないケース:環境不適合

一方で、全てのユーザーに手放しでおすすめはしません。以下のようなケースでは、慎重な検討が必要です。

  • 「ウェットな平滑面」での使用頻度が高い場合:
    • 従来のVibramソールの一部(硬度の高いコンパウンド)は、濡れたタイルやマンホールの上で摩擦係数が著しく低下する傾向があります。
    • これに対しては、「Vibram Megagrip」や「Arctic Grip」といった特殊配合のモデルを選ぶことで技術的に解決可能ですが、モデル選定を間違えると「滑る」という不満につながります。

結論として、「日常生活を快適にアップデートしたい人」から「本格的なトレイル踏破を目指す人」まで、適切なモデルを選定できるリテラシーさえあれば、MERRELLは最強のツールになります。


このメーカーのおすすめ製品は?

エンジニアである私が、製品の「設計意図」と「投入技術」を分析し、エントリー、ミドル、ハイエンドの3つのセグメントで推奨モデルを選定しました。

1. エントリーモデル:不朽の名作「JUNGLE MOC (ジャングル モック)」

1998年の発売以来、世界で累計1,700万足以上を販売した、MERRELLのアイコン的モデルです。

  • カテゴリ: After Sport / Casual
  • 価格帯: ¥15,400程度
  • 推奨理由: 「スリッポン構造におけるホールド感の最適解」

【技術的詳細とエンジニアの視点】

この靴の凄さは、**「ダブルストレッチゴア(伸縮ゴム)」**の張力設計にあります。通常、紐のない靴は歩行時に踵が浮きやすい(ヒールスリップ)のですが、ジャングルモックは甲部分のゴムの弾性係数と、踵を包み込む「ピッグスキンレザー」の摩擦力のバランスが絶妙です。

  • アッパー素材: 撥水ピッグスキン(豚革)。豚革は牛革に比べて繊維構造が粗く、通気性に優れています。これにより、長時間履いても蒸れにくいという熱力学的メリットがあります。
  • ミッドソール: 圧縮成型EVAフットフレーム。衝撃吸収性と安定性を両立させるための密度管理がされています。
  • アウトソール: メレル独自の「スティッキーラバー」。粘着性の高い配合で、ドライな路面でのグリップ力は強大です(※ただし、初期モデルは濡れた路面で滑りやすい特性があるため、心配な方は「JUNGLE MOC 2.0」や「ICE+」モデルを推奨します)。

【私の体験談】

子育て中、子供を抱えた状態で靴を履くシーンで、この「ハンズフリー」な着脱性能は神がかっていました。玄関における「靴を履く」というプロセスの所要時間を数秒短縮できる、これは立派な業務改善です。

2. ミドルレンジ:ハイキングのデファクトスタンダード「MOAB 3 (モアブ 3)」

「Mother Of All Boots(全てのブーツの母)」の名を持つ、世界で最も売れているハイキングシューズのアップデート版です。

  • カテゴリ: Hiking / Multi-Outdoor
  • 価格帯: ¥18,700 – ¥22,000程度
  • 推奨理由: 「剛性と柔軟性のハイブリッド設計」

【技術的詳細とエンジニアの視点】

MOAB 3の設計思想は**「箱から出してすぐに使える快適性(Out-of-the-box comfort)」**です。登山靴特有の「慣らし運転(ブレークイン)」がほぼ不要です。

  • 構造: レザーとメッシュのコンビネーションアッパー。応力がかかる部分には強度のあるレザーを、通気性と屈曲が必要な部分にはメッシュを配置する「トポロジー最適化」のような設計がなされています。
  • 防水技術: GORE-TEX®メンブレン搭載モデルでは、外部からの水の侵入を防ぎつつ(水分子の侵入阻止)、内部の水蒸気は排出する(蒸気圧差による透湿)機能が担保されています。
  • サステナビリティ: シューレース(靴紐)、ウェビング、ライニングに100%リサイクル素材を使用しており、環境負荷低減(LCA: Life Cycle Assessment)の観点でも現代的なアップデートが施されています。

3. ハイエンドモデル:極限性能の追求「MTL (Merrell Test Lab) LONG SKY 2 MATRYX」

MERRELLのイノベーションラボ「MTL」が開発した、トレイルランニング向けのフラッグシップモデルです。

  • カテゴリ: Trail Running / Elite Performance
  • 価格帯: ¥20,000 – ¥30,000クラス(スペックによる)
  • 推奨理由: 「先端材料工学の結晶」

【技術的詳細とエンジニアの視点】

このモデルの白眉は、アッパー素材**「Matryx®(マトリックス)」**の採用です。

Matryxは、フランスのChamatex社が特許を持つ技術で、ケブラー(アラミド繊維)と高強度ポリアミドを織り込んだ複合素材です。

  • 強度対重量比: ケブラーは鋼鉄の数倍の引張強度を持ちます。これをアッパーに採用することで、岩場での擦れに対する圧倒的な耐摩耗性を確保しつつ、極限までの軽量化を実現しています。
  • FloatPro™フォーム: 従来のEVAよりも軽量で、かつ反発弾性(エネルギーリターン)の持続性が高いミッドソール素材。長距離走行時の「へたり」による物性変化を最小限に抑えます。
  • Vibram Megagrip: 濡れた岩場でも最強のグリップを発揮する、Vibram社の最高峰コンパウンドを採用。

これはもはや靴というより、足に装着する「精密機器」です。オーバースペックを楽しむのが好きなエンジニアにはたまりません。


このメーカーの製品はよい製品か?

「よい製品」の定義は多岐にわたりますが、ここではエンジニアリングの観点から**「構造的合理性(工法)」「材料選定(マテリアル)」**の2点に絞って評価します。

1. 「Strobel(ストロボ)」製法による構造的優位性

MERRELLの多くのモデル(MOABやジャングルモックなど)には、**「ストロボ製法(Strobel Construction)」**が採用されています。

  • 工法の解説: アッパー(甲被)と中底(インソール下のシート)を、袋状に縫い合わせる製法です。
  • 比較:
    • セメント製法: アッパーを硬い中底ボードに接着剤で貼り付ける。重くなり、屈曲性が悪い。
    • ストロボ製法: 硬いボードを使わず、布(ストロボ材)で縫い合わせるため、**「軽量」かつ「屈曲性(フレキシビリティ)」**に優れます。
  • エンジニアの評価: 人間の足は歩行時に複雑に変形します。ストロボ製法は、靴底が足の動きに追従して曲がるため、運動エネルギーのロスが少なく、疲労軽減に直結します。また、製造工程において接着剤の使用量を減らせるため、環境負荷や重量のばらつき(公差)を抑える点でも合理的です。

2. 「Vibram(ビブラム)」エコシステムとの連携

MERRELLは、アウトソールの開発においてイタリアのVibram社と深いパートナーシップを結んでいます。

  • 専用設計: 単にVibramのカタログ品を買ってきて貼り付けるのではなく、MERRELL専用のソールパターン(ラグの形状や深さ)を共同開発しています。例えば、MOABシリーズの「Vibram TC5+」コンパウンドは、MERRELL専用にチューニングされた配合です。
  • 品質保証: Vibramの黄色いロゴは、それだけで一定の耐摩耗性とグリップ性能が担保されている証(Certification)でもあります。

3. サステナビリティへの取り組み(材料工学の視点)

製品の「よさ」は、今や環境性能を抜きに語れません。MERRELLは再生素材の活用に積極的です。

  • リサイクル素材: ポリエステル繊維(ペットボトル由来)や、工場で発生した廃棄EVA(端材)を粉砕して再利用したソールなど、廃棄物を減らす「クローズド・ループ」な製造プロセスを導入しつつあります。
  • 耐久性とのトレードオフ: 一般に再生素材はバージン素材に比べて物性が劣る懸念がありますが、MERRELLは耐久性試験(摩耗試験、屈曲試験など)をクリアした配合比率で製品化しており、品質を犠牲にしない設計が見て取れます。

このメーカーの生産地(工場)はどこか?

「アメリカのメーカーだからアメリカ製だろう」と思うのは早計です。現代の製造業において、サプライチェーンはグローバルに展開されています。

調査の結果、現在のMERRELL製品の主要な生産地は**「アジア」**です。

1. 主要生産国:ベトナム (Vietnam)

現在、MERRELLの主力製品(MOAB、ジャングルモックなど)の多くは、ベトナムで生産されています。

実際に製品のタン(舌革)の裏にあるラベルを確認すると、「Made in Vietnam」の表記が大半を占めます。

  • 背景: かつてはコスト削減のために中国生産が主流でしたが、地政学リスクの分散(チャイナ・プラス・ワン)や、ベトナムにおける靴製造技術の高度化に伴い、生産拠点のシフトが進みました。
  • 技術レベル: 現在のベトナムの靴工場は、NikeやAdidasなどのトップブランドも主力工場を構える「世界のスニーカー製造ハブ」です。最新の自動裁断機や射出成型機が導入されており、その技術レベルは非常に高いです。

2. その他の生産国

  • 中国 (China): 一部のアパレルや特定のシューズモデル。
  • カンボジア、バングラデシュ、インドネシア: 親会社Wolverine World Wideのグローバルサプライチェーン網により、これらの国々の工場も活用されています。

3. 工場の品質管理体制

「アジア製で大丈夫か?」という懸念に対して、親会社Wolverine World Wideは厳格な管理体制を敷いています。

  • Tier 1 工場監査: 2024年のサステナビリティレポートによると、同社はサプライチェーンの透明性を高めるため、Tier 1(完成品組み立て工場)に対して155件の社会コンプライアンス監査を実施し、96%の工場をカバーしています。
  • LWG認証: レザー製品においては、環境対策がなされたタナリー(なめし革工場)を認定する国際団体「Leather Working Group (LWG)」のゴールドまたはシルバー評価を受けた工場から100%調達することを達成しています。

つまり、どこの国の工場で作られようとも、**「Wolverine World Wideの品質基準(Quality Standard)」「コンプライアンス基準」**に基づいて管理されており、生産国による品質のバラつきは最小限に抑えられていると言えます。


設計はどこで行っているか?

生産はアジアですが、製品の頭脳にあたる「設計・開発」は本国アメリカで行われています。主に2つの拠点が機能しています。

1. ミシガン州ロックフォード (Rockford, Michigan) – 本社キャンパス

ここがMERRELLの心臓部です。

広大な敷地内にはオフィスだけでなく、デザインスタジオやテストフィールドがあります。

  • フィールドテスト: 本社のすぐ裏手にはトレイル(自然の山道)があり、開発中のプロトタイプをエンジニアやデザイナーが自ら履いて、即座にフィールドテストを行える環境があります。
  • エンジニア視点の重要性: 設計室(CADの前)と現場(泥だらけのトレイル)が物理的に近いことは、開発サイクル(PDCA)を回す上で極めて有利です。「机上の空論」ではない、実用的なフィードバックが即座に設計に反映されます。

2. マサチューセッツ州ボストン (Boston, Massachusetts) – イノベーションハブ

2024年11月、親会社Wolverine World Wideはボストンに新たな**「Global Innovation Hub(グローバル・イノベーション・ハブ)」**を開設しました。

  • 役割: デザイン、開発、マーチャンダイジングの拠点を集約し、トレンドの発信地である都市部で優秀なクリエイター人材を確保する狙いがあります。
  • 機能: ここでは、SauconyやMerrellなどのブランド横断的な技術交流や、次世代素材の先行開発が行われています。

つまり、MERRELLの製品は、**「ミシガンでの泥臭く実直な機能検証」「ボストンでの洗練されたデザイン・先端研究」**という、2つのエンジニアリング拠点の連携によって生み出されているのです。


品質は大丈夫か?

私の品質保証(QA)業務の経験に基づき、MERRELL製品の品質を「耐久性」「機能持続性」「不具合リスク」の3点から評価します。

1. 耐久性 (Durability):優良

MERRELL製品、特にハイキングラインの耐久性は非常に高い水準にあります。

  • アッパーの堅牢性: MOABシリーズなどで見られるダブルステッチ(二重縫製)や、負荷のかかる箇所へのTPU補強は、破断リスクを大幅に低減しています。
  • ソールの剥離: 安価な靴でよくある「ソールが剥がれる」という不具合は、MERRELLでは比較的少ないです。これは、アウトソールがサイド部分まで巻き上がっているデザインが多く、接着面積(Bonding Area)が広く確保されているため、せん断応力に対して強い構造になっているからです。

2. 機能持続性 (Performance Retention):メンテナンス依存

防水性やグリップ力は、使用状況とメンテナンスに大きく依存します。

  • GORE-TEX: メンブレン自体は劣化しにくいですが、表面の撥水加工(DWR)が泥汚れや摩擦で落ちると、表生地が保水してしまい「透湿性」が損なわれます。定期的な洗浄と撥水スプレーの塗布が必要です。
  • 加水分解: ポリウレタン(PU)を使用したミッドソールは、湿度と時間経過により加水分解を起こし、ボロボロに崩れるリスクがあります。これは化学的宿命です。しかし、MERRELLは近年、加水分解しにくい**EVAベースの「FloatPro」「Durable EVA」**への移行を進めており、このリスクに対する設計的対策を講じています。

3. 品質管理のバラつき (Variance):並行輸入品に注意

正規ルート品における初期不良率は低いと推測されますが、ネット通販の口コミでは稀に「左右でサイズ感が違う」「接着剤のはみ出し」といった報告があります。

特に注意すべきは「並行輸入品」や極端な安売り品です。これらは、高温多湿な倉庫で長期間保管されていた「長期在庫品」である可能性があり、購入直後に加水分解が進行するリスク(潜在的不良)があります。エンジニアとしては、品質管理された正規販売店での購入を強く推奨します。


このメーカーの製品は買っても大丈夫?評判は?

技術的な分析に加え、実際の市場での評価(Voice of Customer)を分析しました。エンジニア仲間やSNS、通販サイトのレビューデータを集約し、「良い口コミ」と「悪い口コミ」の傾向を分類しました。

良い口コミ:機能への信頼

多くのユーザーが、その「歩きやすさ」と「タフさ」を称賛しています。

  • 「魔法のようなフィット感」:
    • ジャングルモックのユーザーからは、「一度履いたら他に戻れない」「足の一部になったようだ」という声が多数。これはラスト(木型)設計の優秀さの証左です。
  • 「幅広の足でも痛くない」:
    • 「Wide Width(ワイドワイズ)」モデルの展開があり、日本人に多い甲高幅広の足型にも適合しやすい点が評価されています。
  • 「雨の日無敵説」:
    • MOABのGORE-TEXモデル使用者からは、「水たまりに足を突っ込んでも濡れない」という防水性能への絶対的な信頼が寄せられています。

悪い口コミ:特定の弱点

一方で、ネガティブな意見には明確な技術的理由が存在する「共通の傾向」があります。

  • 「濡れたタイルやマンホールで滑る」:
    • これこそがMERRELL最大の弱点であり、真実です。
    • 技術的解説(摩擦学): 初期のジャングルモックや一部のMOABに採用されているVibramソールは、泥や岩場でのトラクション(引っかかり)と耐久性を重視して、比較的「硬度が高い」ゴムコンパウンドを使用しています。硬いゴムは、濡れて平滑な面(マンホール、コンビニの床、駅のタイル)では、表面の微細な凹凸に食い込むことができず、水膜の上を滑走してしまいます(ハイドロプレーニングに近い現象)。
    • 対策: この弱点を克服するため、MERRELLは**「Vibram Arctic Grip(アークティックグリップ)」「Vibram Megagrip(メガグリップ)」**といった、濡れた路面に特化したコンパウンドを採用したモデルを投入しています。
    • アドバイス: 雨の日の街履きをメインにするなら、ソール裏に黄色いVibramロゴと共に「Megagrip」等の表記があるモデル、または滑り止め性能を強化した「2.0」以降のモデルを選ぶのが工学的に正しい選択です。
  • 「シューレースループ(紐通し)が切れる」:
    • 一部のモデルで、金属製のハトメではなく布製のループを採用している場合、長年の使用や摩擦でここが破断するという報告があります。これは軽量化とのトレードオフですが、耐久性を最優先するなら金属ハトメのモデルを選ぶべきです。

まとめ

今回の徹底調査の結果、エンジニアとしての最終評価をまとめます。

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項目評価エンジニアのコメント
メーカー国籍米国親会社は巨大企業Wolverine World Wide。資本・技術力は盤石。
生産拠点ベトナム他グローバル基準の品質管理下にあるTier 1工場で生産。信頼性は高い。
設計・開発米国ミシガン本社とボストン拠点の連携。フィールドテスト重視の姿勢。
おすすめ度高 (High)実用性と価格のバランス(コスパ)が非常に優れている。
注意点滑り・加水分解用途に合わせたソール選びと、長期在庫を避ける購入ルート選定が重要。

結論:

MERRELLは、ファッションブランドのように見栄えだけで勝負するメーカーではありません。その本質は、**「人間工学に基づいたラスト設計」と「適材適所のマテリアル選定」**を行う、極めて真面目なエンジニアリング集団です。

特に、エントリーモデルの「ジャングルモック」やミドルレンジの「MOAB」に見られる、**「1万円〜2万円台で、VibramソールやGORE-TEX、ピッグスキンレザーといった高機能素材を惜しみなく投入する姿勢」**は、BOMコストの観点から見ても驚異的です。

ただし、「滑る」という物理的特性については、ユーザー側のリテラシーが試されます。使用環境(トレイルなのか、雨の日の駅構内なのか)に合わせて、適切なソールパターンのモデルを選定してください。それができれば、MERRELLはあなたの足を支える最高のパートナー(相棒)となるでしょう。

以上、エンジニアブロガー「ろぼてく」がお送りしました。

あなたの靴選びに、少しでも「確かな根拠」を提供できたなら幸いです。


※本記事の技術データや価格情報は、2025年時点の調査に基づいています。製品仕様は改良のため予告なく変更される場合があります。

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この記事を書いた人

現役エンジニア 歴12年。
仕事でプログラミングをやっています。
長女がスクラッチ(学習用プログラミング)にハマったのをきっかけに、スクラッチを一緒に学習開始。
このサイトではスクラッチ/プログラミング学習、エンジニアの生態、エンジニアによる生活改善について全力で解説していきます!

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