こんにちは!親子でプログラミングを楽しむブログ「おやこプログラミング」の、ろぼてくです。
私はエンジニアとして10年以上、電気製品の設計や品質保証の業務に携わってきました。そのため、製品が安全か、性能は確かか、といった品質の「勘所」を技術的な視点から見抜くことができます。
最近、Amazonなどで「INIU(イニウ)」というブランドのモバイルバッテリーをよく見かけませんか?「Ankerより安いけど、品質はどうなんだろう?」「そもそも、どこの国のメーカー?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなINIUのモバイルバッテリーについて、エンジニアの私が徹底的に調査・分析した結果を、皆さんに分かりやすくお伝えします。実際に製品をテストしたデータや、ユーザーのリアルな口コミも交えながら、プロの視点で「INIUは買いなのか?」を判定します。
- 電機メーカー勤務
- エンジニア歴10年以上
- 品質担当経験あり

結論:INIUはどこの国のメーカーか?

結論から言うと、INIUは中国のメーカーです 。
もう少し詳しく言うと、拠点は中国の深セン(Shenzhen)にあります。
「なんだ、中国メーカーか…」と不安に思った方もいるかもしれません。しかし、エンジニアの視点から言わせてください。現代において「中国の深セン製」であることは、もはや品質が低いという意味にはなりません。むしろ、深センは世界中の名だたるハイテク企業が集まる「エレクトロニクスのシリコンバレー」とも言える場所です。
最新技術が集まるこの地で、INIUは世界174カ国以上、4000万人以上のユーザーに製品を届けるグローバルブランドとして成長しています 。Amazonのポータブル充電器カテゴリでNo.1ブランドになった実績もあり、単なる地域的なメーカーではなく、世界市場で戦う実力を持った企業であることがわかります.
彼らの公式サイトが多言語・多通貨に対応していることからも、単に製品を輸出するだけでなく、グローバルなブランドとして自らを確立しようという強い意志が感じられます 。
結論:買うことをおススメできるか?

これも結論から。エンジニアとしての私の最終判断は、**「はい、条件付きでおススメできます」**です。
特に、高いコストパフォーマンスを重視し、最新の機能を有名ブランドより安く手に入れたいユーザーにとって、INIUは非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
私自身、これまで数多くのモバイルバッテリーを分解・テストしてきましたが、INIUの製品は「価格以上の工夫と安全対策」が施されているという印象です。この記事では、その理由を技術的な視点から紐解いていきます。
ただし、「条件付き」としたのには理由があります。特定の使い方、特に複数デバイスの同時充電においては注意すべき点もあります。それらも含めて、この記事を読めばあなたがINIUを選ぶべきかどうかが明確にわかるはずです。
このメーカーの製品はよい製品か?

「よい製品」の定義は人それぞれですが、電気製品の設計者として、私は以下の4つの基準で判断します。
- **安全性:**危険性がないこと。これは絶対に譲れない最低条件です。
- **性能:**公称値通りの性能が、効率よく発揮されること。
- **耐久性:**日常的な使用に耐えうること。
- **価値:**上記3点を満たした上で、価格に見合っているか。
INIUは自社を「高速充電技術の限界に10年間挑戦し続けてきた」企業だと述べており、充電器を「より速く、より安全に」することを使命としています 。この理念が製品に反映されているかを、客観的な事実から見ていきましょう。
製品の良し悪しを判断する上で、特に信頼性の高い指標が2つあります。
- 安全認証(PSEマーク)の取得: 日本国内で電気製品を販売するための法的な必須要件です。これがあることは、安全性の最低ラインをクリアしている証拠です 。
- 業界最長クラスの3年保証: INIUは「3-Year INIU Care」という長期保証を提供しています 。多くの競合製品が18ヶ月〜24ヶ月保証の中で、3年という期間は異例の長さです。これは、メーカーが自社製品の部品寿命や故障率にデータに基づいた自信を持っていることの現れです。品質保証の観点から、これは消費者にとって非常に大きな安心材料となります。
この2点だけでも、INIUが品質に対して真摯に向き合っていることが伺えます。
このメーカーの生産地(工場)はどこか?

INIUの製品は、中国の深センで製造されています。
さらに深掘りして、日本の法律(電気用品安全法)に基づいて表示が義務付けられているPSEマークの届出事業者名を確認したところ、**「Shenzhen Topstar Industry Co.,Ltd.」**という企業名が記載されていました 。
この会社を調査すると、INIU製品に関する米国連邦通信委員会(FCC)への申請者としても登録されており、INIUブランドとこの製造会社が密接に関係していることがわかります 。Shenzhen Topstar Industry Co., Ltd.は、深センに拠点を置くスマートフォンアクセサリの専門サプライヤーで、10年以上の業界経験と3100平方メートルの工場規模を持っています 。
これは、エレクトロニクス業界で一般的な「ODM/OEM」という形態である可能性が高いことを示唆しています。つまり、Topstar社が製品の設計・製造(ODMまたはOEM)を行い、INIUがブランドとして販売・マーケティングを担うという分業体制です。
重要なのは、この製造パートナーであるTopstar社が、品質基準の厳しい日本、アメリカ、ヨーロッパへの輸出実績を豊富に持っている点です 。これは、INIUが国際的な安全基準や品質管理に対応できる、経験豊富な製造基盤を持っていることの裏付けとなります。
設計はどこで行っているか?

ブランドの拠点と主要な製造パートナーが共に中国・深センにあることから、製品の設計、研究開発(R&D)、エンジニアリングも深センで行われていると考えるのが最も合理的です。
エンジニアの視点から補足すると、これは非常に大きな強みです。設計チームと製造ラインが同じ都市にあることで、試作品の製作からテスト、修正までのサイクルを驚くほど高速に回すことができます。何か問題が見つかっても、数週間ではなく数日で解決できるのです。
この「開発スピードの速さ」こそが、PD 3.1やQi2といった最新の充電規格をいち早く製品に反映させ、競争の激しい市場でINIUが生き残っている理由の一つでしょう 。
品質は大丈夫か?

さて、最も気になる「品質」について、エンジニアの視点から3つの柱で徹底的に分析します。
電気用品安全法 (PSE) と安全機能
モバイルバッテリーは、内蔵するリチウムイオン電池が原因で発火・爆発するリスクをゼロにはできません。だからこそ、安全性を担保する仕組みが何よりも重要です。
- PSEマークの存在: 日本では2019年2月から、PSEマークのないモバイルバッテリーの製造・輸入・販売が法律で禁止されています 。INIUが日本国内で正規に販売している製品には、このPSEマークがしっかりと記載されており、届出事業者名も「Shenzhen Topstar Industry Co.,Ltd.」と明記されています。これは、法律で定められた安全基準の検査をクリアしていることを意味します 。
- 多重保護システム: INIUは独自の「SmartProtectシステム」を搭載し、過充電、過熱、ショートなどを防ぐと謳っています 。これは現代の高品質なバッテリーマネジメントシステム(BMS)には標準的な機能ですが、これらが確実に機能していることへの自信が、前述の「3年保証」という形で示されています 。
性能の真実 – 容量と充電速度
カタログスペックだけでなく、実際の性能がどうかが重要です。
- 変換ロス(電力変換効率): モバイルバッテリーの容量が20,000mAhと書かれていても、実際にデバイスを充電できるのはそのすべてではありません。電圧を変換する際などに電力が熱として失われる「変換ロス」が発生するためです。このロスが少ないほど、効率の良い=品質の高いバッテリーと言えます。 ある第三者機関のテストによると、INIUの20,000mAhモデル「BI-B5」は、**実測容量が14,473mAhで、変換ロス率はわずか27.64%**でした 。競合製品の中にはロス率が50%近くに達するものもある中で、この数値は非常に優秀です。公称値に近い電力をしっかりと使える、技術的に優れた製品であると言えます。
- 充電速度の注意点: 口コミを見ると「速い」という声と「遅い」という声が混在しています。これは、使い方によって性能が変わるためです。 テストデータを見ると、1ポートだけで充電する場合の出力は18.03Wと高速です 。しかし、 2ポート同時に使うと合計出力が14.11Wに低下し、片方のポートは2.12Wという非常に低い出力になってしまいます 。 これは、コストを抑えるために、複数のポートへ同時に高出力を分配する複雑な電力制御回路を簡略化しているためと考えられます。これはINIUに限らず、価格を抑えた製品によく見られる設計上のトレードオフです。「スマホとイヤホンを同時に充電する」といった使い方なら問題ありませんが、「スマホとタブレットを両方急速充電したい」というニーズには応えられない可能性があることを知っておくべきです。
構造とビルドクオリティ
製品の作りや使い勝手も品質の重要な要素です。
- 外装と耐久性: 多くのモデルで採用されているマットな質感の筐体は、傷がつきにくく手触りが良いと好評です 。あるレビューサイトの落下テストでは、外装に傷はついたものの、機能に影響はなかったと報告されており、基本的な耐久性は確保されているようです 。
- 便利な付加機能: 単純なLEDランプではなく、バッテリー残量が1%刻みの数字で表示されるデジタルディスプレイは、多くのユーザーから高く評価されています 。これは、充電の計画が立てやすく、非常に実用的な機能です。他にも、緊急時に役立つLEDライトや、簡易的なスマホスタンド機能など、ユーザーの利便性を考えた工夫が見られます 。ただし、スマホスタンドのような付加機能の耐久性については、少し頼りないという意見も見られました 。
このメーカーの製品は買っても大丈夫?評判は?

実際に製品を使っているユーザーの声をまとめ、私の技術的な分析と照らし合わせてみましょう。
良い口コミ
- 圧倒的なコストパフォーマンス: 「この価格でこの性能はすごい」「Ankerならもっと高い」といった声が最も多く見られました。大容量、デジタル表示、急速充電といった付加価値の高い機能を、手頃な価格で実現している点が最大の魅力です 。
- 優れた携帯性: 「同じ容量の他社製品より軽い」「コンパクトで持ち運びやすい」という評価も多数あります。特に10,000mAhクラスのモデルは、そのコンパクトさが際立っているようです 。
- 便利な機能とデザイン: やはり残量が数字でわかるデジタル表示は「直感的で便利」と大好評です 。また、一部モデルに採用されている肉球マークのLEDインジケーターは「可愛い」とデザイン面での支持を集めています 。
- 安心の長期保証: 3年という長い保証期間が、購入の決め手になったという声も少なくありません。万が一の時も安心できるという信頼感につながっています 。
- 十分な充電速度(単ポート使用時): 1台のスマートフォンを充電する際のスピードには、ほとんどのユーザーが満足しています 。
悪い口コミ
- 複数ポート同時使用時の速度低下: 最も多く指摘されている弱点です。これは私の技術分析とも完全に一致します。「2台同時に充電したら片方が全然充電されない」という体験は、製品の仕様によるものです 。
- 公称値と実測値の乖離(一部モデル): テスターを使った詳細なレビューでは、「最大22.5W出力はHuawei製のスマホなど特定のデバイスでしか出ず、他のデバイスでは18W程度が上限だった」という報告があります 。これは、メーカー独自の急速充電規格への対応状況によるもので、性能を最大限に引き出したいユーザーは注意が必要です。
- 耐久性への懸念(特に付属品や付加機能): バッテリー本体の耐久性よりも、付属のケーブルや、内蔵スマホスタンドのヒンジ部分など、付加機能の作りが少し弱いという指摘が見られます 。
- 本体が重い(大容量モデル): 20,000mAh以上の大容量モデルを購入したユーザーから「思ったより重い」という声があります。客観的なデータでは同容量クラスで平均かそれより軽いことが多いのですが 、絶対的な重量があるため、携帯性を最優先する人は注意が必要です。
- 充電ケーブルが付属しない場合がある: バッテリー本体を充電するためのケーブルは付属しますが、iPhoneを充電するためのLightningケーブルなどが同梱されていないことへの不満の声がありました 。
このメーカーのおすすめ製品は?

INIUのラインナップの中から、あなたの使い方に合った最高の1台を見つけられるよう、エントリー・ミドル・ハイエンドの3つのカテゴリーでおすすめモデルを厳選しました。
INIU おすすめモバイルバッテリー 用途別比較
| カテゴリー | モデル名 | 容量 | 最大出力 | 主な特徴 | こんな人におすすめ |
| エントリーモデル | INIU B61 | 10,000mAh | 22.5W | 超コンパクト設計、スマホスタンド機能、軽量 (195g) | 毎日の通勤・通学でスマホを1〜2回充電したい人。荷物をとにかく軽くしたい人。 |
| ミドルレンジ | INIU BI-B5 | 20,000mAh | 22.5W | 大容量と携帯性の好バランス、残量%デジタル表示、LEDライト | 1泊2日の旅行や出張。タブレットや複数のガジェットを持ち歩く人。災害への備え。 |
| ハイエンド | INIU B64 (PowerNova) | 27,000mAh | 140W | ノートPCへの急速充電 (PD 3.1対応)、超大容量、リアルタイム出力表示 | MacBook Proなど高出力を要するノートPCを使う人。出先でPC作業をするビジネスパーソン。 |
エントリーモデル:INIU B61 (10,000mAh)
毎日の持ち歩きに最適な、超軽量コンパクトモデル。
10,000mAhという、スマホを約2回フル充電できる十分な容量を持ちながら、約195gという軽さを実現しています 。Ankerの定番モデル「PowerCore 10000」シリーズとしばしば比較されますが、INIU B61はより多くのポートやスマホスタンドといった付加機能を持ちながら、同等かそれ以下の価格で手に入ることが多く、コストパフォーマンスで優位に立っています 。通勤カバンに忍ばせておく「お守り」として最適な一台です。
ミドルレンジ:INIU BI-B5 (20,000mAh)
容量・性能・価格のバランスが最も優れた万能モデル。
この記事で何度も取り上げた、INIUの代表作とも言えるモデルです。特筆すべきは、27.64%という低い変換ロス率 。これは、バッテリーセルからポートまで、電力の通り道が効率的に設計されている証拠です。20,000mAhの大容量は、旅行や出張、さらには災害時の備えとしても十分な安心感を与えてくれます。残量が数字でわかるデジタル表示も、このクラスのバッテリーでは非常に重宝します 。多くの人にとって「ちょうどいい」一台と言えるでしょう。
ハイエンド:INIU B64 (PowerNova) (27,000mAh)
MacBook Proさえ急速充電する、パワフルな怪物。
最大140Wという圧倒的な高出力が特徴のプロフェッショナルモデルです 。これは最新の充電規格「USB PD 3.1」に対応しており、これまでモバイルバッテリーでは充電が難しかった高性能なノートPC(例: MacBook Pro 16インチ)でさえ、コンセントから充電するのと遜色ないスピードで充電できます。このクラスの性能を持つ製品として有名なAnkerの「737 Power Bank」としばしば比較されますが、INIU B64は同等の性能をより競争力のある価格で提供しており、パワーとコスパを両立したいユーザーにとって賢い選択肢となります 。
まとめ

最後に、INIUというメーカーについて、エンジニアとしての最終評価をまとめます。
- 出自: INIUは中国・深セン発のグローバルブランドです。その拠点は、品質の懸念材料ではなく、むしろ最先端技術が集まる競争環境の証と捉えるべきです。
- 品質と信頼性: 日本の安全基準であるPSEマークを正規に取得しており、業界最長クラスの3年保証を掲げていることから、品質と安全性への自信は本物と判断できます。
- 強み: 最大の強みは、圧倒的なコストパフォーマンスです。特に電力変換効率の高さや、デジタル残量表示といった実用的な機能を、競合よりも安価に提供しています。
- 弱み: 複数ポートを同時に使用した際の出力低下は、設計上の明確な弱点です。複数のデバイスを同時に「急速」充電したいユーザーは、この点を理解した上で購入する必要があります。
総じて、INIUは**「賢い選択」**をしたいユーザーに強くおススメできるブランドです。絶対的な最高性能を求めるならAnkerなどのトップブランドに軍配が上がる場面もありますが、多くのユーザーにとって十分すぎる性能と安全性を、非常に魅力的な価格で提供しています。
モバイルバッテリー選びで最も重要なのは、ご自身の使い方に合った容量と出力を持つ製品を選ぶことです。この記事が、あなたの最適な一台を見つける手助けとなれば幸いです。

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