こんにちは!親子でプログラミングを楽しむブログ「https://oyako-programming.com/」を運営している、エンジニアブロガーの「ろぼてく」です。
電気製品の設計と品質業務に10年以上携わってきた経験から、新興メーカーの製品を見ると「この価格でこのスペック、本当に大丈夫なのか?」と、つい中身を分析したくなってしまいます。
最近、ネットで頻繁に見かけるようになった「PASOUL(パソウル)」というPCメーカー。驚異的なコストパフォーマンスを謳っていますが、その実態はどうなのでしょうか。安さには必ず理由があるはずです。
そこで今回は、私の職業病ともいえる探求心で、PASOULというメーカーの正体から製品の品質、そしてユーザーの生の声まで、徹底的に掘り下げてレビューします。この記事を読めば、あなたがPASOULのPCを買うべきかどうかが、明確にわかるはずです。
- 電機メーカー勤務
- エンジニア歴10年以上
- 品質担当経験あり

どこの国のメーカー 総まとめ
みんなが気になるあのメーカーの国籍と製品レビューがわかります!100社以上を徹底調査しています!

結論:PASOULはどこの国のメーカーか?

結論から言うと、PASOULは**日本のメーカー(ブランド)**です 。
より正確に言えば、埼玉県八潮市に本社を置く**株式会社オーエープラザ(OAPLAZA Co., Ltd.)**が展開する、オリジナルのBTOパソコンブランドです 。オーエープラザは2003年に設立された、累計50万台以上のPC出荷実績を持つれっきとした日本の企業です 。
ただし、ここで一つ重要なポイントがあります。ブランドは日本ですが、製品の製造・組み立ては主に中国のOEM/ODM工場に委託されています 。
「なんだ、結局中国製か」と思った方もいるかもしれませんが、これは現代の電化製品ではごく標準的な手法です。例えば、Apple社のiPhoneも「Designed by Apple in California, Assembled in China」と表記されているように、設計や品質管理を本国の企業が担い、実際の生産は巨大な設備を持つ海外の専門工場に委託するモデルは、コストと品質を両立させるための最適な戦略なのです。
公式サイトに「国内工場生産 Made in Yashio」という記載があるのは、この点を少し分かりにくくしているかもしれません 。これは、中国で製造された部品や半完成品を、最終的に埼玉県の八潮事業所で顧客の注文に合わせてカスタマイズ(メモリ増設など)し、OSのインストールや最終的な品質検査を行ってから出荷していることを指していると考えられます。この最終工程を日本国内で行うことで、日本ブランドとしての信頼性を担保しつつ、海外生産のコストメリットを享受するという、非常に巧みなビジネスモデルと言えるでしょう。
結論:買うことをおススメできるか?

これも結論から申し上げます。**「あなたがどのようなユーザーか」**によって、答えは「強くおススメできる」と「絶対にやめた方がいい」に真っ二つに分かれます。
これは、PASOULの製品が非常に尖った思想で作られているからです。彼らは**「筐体の質感」「バッテリー性能」「スピーカー音質」といった付加価値を徹底的に削ぎ落とすことで、価格からは考えられないほどの「CPU」「メモリ」「SSD」というPCの基本性能**を実現しています。
この極端なトレードオフを理解することが、PASOUL製品選びの最も重要な鍵となります。
PASOULのPCを買うべき人
- 予算を抑えたい、据え置き利用がメインのパワーユーザー
- **用途:**自宅や寮の部屋、オフィスの決まった場所でPCを使い、持ち運びはほとんどしない学生や在宅ワーカー。ウェブブラウジングやレポート作成がメインのセカンドPCを探している方。
このタイプのユーザーは、PCを常に電源に接続して使うため、バッテリー駆動時間の短さは問題になりません 。また、音質やキーボードの打鍵感にこだわる場合は、外部スピーカーやお気に入りのマウス・キーボードを接続すれば解決できます 。彼らにとって重要なのは、支払った金額に対して得られる処理性能、つまり「エンジン」のパワーです。PASOULは、まさにこのニーズに完璧に応える選択肢です。
PASOULのPCを避けるべき人
- 頻繁にPCを持ち運ぶ「モバイルワーカー」
- 高級感や所有満足度を重視するユーザー
出張や講義のために毎日PCを持ち歩き、電源のない場所で作業することが多い人にとって、PASOULの短いバッテリー駆動時間や、華奢な印象を与える電源プラグは致命的です 。また、ボディのプラスチッキーな質感や、カチャカチャと安っぽく聞こえるキーボードの打鍵音は、道具としての愛着を重視するユーザーにとっては大きなストレスになるでしょう 。
このメーカーのおすすめ製品は?

PASOULの魅力は、予算と用途に応じて明確な性能ランクの製品を選べる点にあります。ここでは、数あるラインナップの中から、特にコストパフォーマンスに優れたモデルを「エントリー」「ミドルレンジ」「ハイエンド」の3つのカテゴリに分けてご紹介します 。
| カテゴリ | おすすめモデル | 主要スペック | 価格(目安) | おすすめのユーザーと用途 |
| エントリーモデル | PASOUL NC15J (Intel N150) | 第14世代 Intel N150, メモリ12GB, 256GB NVMe SSD | 44,800円 | 学生、家庭用セカンドPC。ウェブ閲覧、Office作業、動画視聴といった日常的な用途に最適。圧倒的なコスパを誇る一台 。 |
| ミドルレンジ | PASOUL NC15J (Core i5-1240P) | 第12世代 Intel Core i5-1240P, メモリ16GB, 500GB NVMe SSD | 62,800円 | 在宅ワーカー、複数の作業を同時にこなす方。多くのブラウザタブ、Zoom、Officeアプリを同時に開いても快適に動作するパワフルなCPUが魅力 。 |
| ハイエンド/ゲーミング | ゲーミングノート HN6-A6L | 第12世代 Intel Core i7-12650H, NVIDIA GeForce RTX 4060, メモリ16GB, 144Hzディスプレイ | 159,800円 | PCゲーム入門者、動画編集などを行うクリエイター。専用GPU「RTX 4060」により、最新のゲームやクリエイティブ作業を快適にこなせる性能を持つ 。 |
各モデルの分析
- エントリーモデル: 搭載されているIntel N100やN150といったCPUは、旧来のCeleronとは一線を画す性能を持っています。ネット上の多くのレビューでも、ウェブブラウジングや動画視聴といった日常作業なら驚くほどサクサク動くと評価されています 。この価格帯でメモリを12GBも搭載しているのは破格であり、PASOULの大きな強みです。
- ミドルレンジ: このモデルの心臓部であるCore i5-1240Pは、高性能なPコアと高効率なEコアを組み合わせたハイブリッド構成が特徴です。これにより、実際のマルチタスク環境で非常に高いパフォーマンスを発揮します。公式サイトでも売上ランキング1位になるなど、性能と価格のバランスが最も取れた、万人におすすめできるモデルです 。
- ハイエンド/ゲーミング: ここでの主役は完全にGPUです。RTX 4060は、多くの最新ゲームをフルHD解像度の高設定で快適にプレイできる実力を持っています。また、滑らかな映像表示に不可欠な144Hzの高リフレッシュレート液晶を搭載している点も、ゲーミングPCとして抜かりがありません。この価格で本格的なゲーミング環境が手に入るのは、非常に魅力的です。
このメーカーの製品はよい製品か?

製品設計の世界では、「良い製品」とは「目標とするコストで、意図された用途をきちんと満たす製品」を指します。4万円のノートPCが、20万円のMacBookのような質感を備えていないからといって、一概に「悪い製品」とは言えません。その基準でPASOULを評価してみましょう。
強み(「良い」部分)
- 圧倒的な処理性能のコストパフォーマンス: これがPASOULの最大の価値です。CPU、メモリ、SSDといったPCの根幹をなすパーツには、価格に見合わないほど高性能なものが使われています。ユーザーレビューでも、SSDによる高速な起動やアプリケーションの快適な動作は一様に高く評価されています 。
弱み(トレードオフの部分)
- 筐体と素材: ボディは主にプラスチック製で、高級感に欠けるという意見が多く見られます 。キーボードも「安っぽい」「打鍵音が大きい」といった指摘があり、触れる部分でのコストカットが顕著です 。
- 周辺コンポーネント: 最もコストカットの影響が現れているのが以下の部分です。
- スピーカー: 「こもったような音」「聞き取りづらい」という評価が非常に多く、安価な小型ドライバーを使っていることが伺えます 。
- バッテリー: 公称値は4時間でも、実際の使用では2時間程度しか持たないという報告が多数あります 。これは、コストを抑えるために小容量のバッテリーパックを採用していることを示唆しています。
- ポートとプラグ: USBポートが硬すぎる、電源プラグが細くて折れそう、といった物理的な品質に関する指摘があります 。これらは、部品の製造公差が甘かったり、機械的な強度が優先されていなかったりする可能性を示しており、エンジニアとしては少し気になるポイントです。
PASOULのノートPCは、まるで「キットカー」のようなものだと私は考えています。エンジンは非常にパワフルですが、ボディや内装、乗り心地は最低限です。豪華で快適なドライブ体験を求める人ではなく、限られた予算で最高のパフォーマンスを求める愛好家向けの製品なのです。
このメーカーの生産地(工場)はどこか?

前述の通り、主要な製造・組み立ては中国にあるOEM/ODM工場で行われています 。
これは現代の電子機器業界では常識であり、世界的に有名な大手ブランドの多くも、これらの専門工場に生産を委託しています。巨大な生産設備を持つ専門工場に委託することで、オーエープラザのような比較的小規模な企業では到底実現不可能なスケールメリット(大量生産によるコスト削減)を享受できるのです。品質は、委託元であるオーエープラザがどのような部品を指定し、どのような品質基準を設けるかによって決まります。
設計はどこで行っているか?

製品の企画、仕様の決定、搭載する部品の選定、そして最終的な品質保証といった工程は、日本の株式会社オーエープラザが担当しています 。
ここに、このブランドの日本企業としての付加価値があります。どのCPUを使い、メモリは何GBにするか、そして八潮の事業所から出荷する前にどのような検査項目をクリアしなければならないか。これらすべてを日本側で管理しているのです 。この「日本の目利きと管理」があることが、単なる中国製品の輸入販売とは一線を画す、大きな信頼性の担保となっています。
品質は大丈夫か?

エンジニアの視点から「品質」を分析する場合、私はそれを2つの側面に分けて考えます。
- 性能品質(Performance Quality): これは、搭載されている部品がスペック通りの性能を発揮しているか、という点です。この観点では、PASOULの品質は良好と言えます。ユーザーはSSDの速さやCPUの快適な動作を実感しており、部品はきちんと機能しています 。
- 製造・耐久品質(Build & Durability Quality): これは、筐体の頑丈さ、素材の感触、コネクタ部分の長期的な信頼性など、物理的な側面です。こちらに関しては、懸念が残ると言わざるを得ません。
特に気になるのは、ユーザーレビューで指摘されているいくつかの点です。
- 電源プラグ : 「細くて折れそう」という指摘は、機械設計の観点から見過ごせません。電源コネクタは頻繁に抜き差しされ、力がかかる部分です。ここにコストを優先して華奢な部品を使うのは、長期的な信頼性を軽視した設計と言えるかもしれません。取り扱いには注意が必要です。
- 硬いポート類 : これは、製造公差の甘い安価な部品を使っている可能性を示唆します。機能はしますが、ポートやケーブルの摩耗を早める可能性があり、製品としての洗練性には欠けます。
- 内部構造 : 分解レビュー動画では「非常に小さいマザーボード」と大きなバッテリーという言及がありました。これはシンプルでコスト効率の良い内部レイアウトですが、高価なノートPCに見られるような洗練された熱設計や部品配置とは異なります。
これらの情報から推測するに、オーエープラザの品質管理は、「正常に電源が入り、OSが起動し、広告通りのスペックで動作するか」という機能的な合否判定に重点を置いているようです。触り心地や長期的な機械的ストレス、ユーザーの五感に訴える部分の品質は、価格とのトレードオフの中で優先順位が低く設定されているのでしょう。デスクの上で丁寧に扱われる分には「大丈夫」ですが、日々の持ち運びといった過酷な使用環境には向いていないかもしれません。
このメーカーの製品は買っても大丈夫?評判は?

PASOULの評判を調べると、絶賛する声と厳しい批判が混在しています。しかし、それらの口コミを詳しく分析すると、ある一つの真実が浮かび上がってきます。
良い口コミ
良い評価の根底にあるのは、ほぼ例外なく**「驚異的なコストパフォーマンス」**です。
- テーマ1:圧倒的なコスパ 多くのユーザーが「この価格でこのスペックは信じられない」「コスパ最高」と評価しています 。支払った金額以上の処理性能が手に入ることへの満足感が、レビューから強く伝わってきます。
- テーマ2:日常使いでの快適な動作 SSDによる高速起動や、「サクサク動く」と表現される軽快な操作感は、特にウェブ閲覧やOffice作業がメインのユーザーから高く評価されています 。
- テーマ3:限定的な用途での高い満足度 親へのプレゼント、子供の初めてのPC、家庭内のセカンドPCといった、高い要求をしない特定の用途で購入したユーザーからの満足度は非常に高い傾向にあります 。価格が重要な決定要因となる場面で、PASOULは期待にしっかり応えています。
悪い口コミ
一方で、悪い評価は**「価格相応の安っぽさ」**に集中しています。
- テーマ1:チープな外観と感触 最も多い不満は、製品の物理的な質感に関するものです。「プラスチッキーで高級感がない」「キーボードの感触が悪い」といった、触れる部分への不満が目立ちます 。
- テーマ2:機能面での明確な妥協点 特に**「バッテリーが持たない(実質2時間程度)」「スピーカーの音質が悪い」**という2点は、多くのユーザーが指摘する大きな欠点です 。これらは、ノートPCとしての機動性を大きく損なう要因となります。
- テーマ3:細かなハードウェアの不満 前述の硬いUSBポート、華奢な電源プラグ、不安定なタッチパッド、負荷時のファン騒音など、細かな使い勝手に関する不満も散見されます 。
- テーマ4:初期不良とサポート ごく一部ですが、電源が入らないといった初期不良の報告もあります 。しかし、その後のサポート対応は迅速で誠実だったという声もあり、安価なブランドながらサポート体制は機能しているようです 。
これらの良い口コミと悪い口コミは、決して矛盾してはいません。これらは、**「高性能な中身を、低コストな外殻に詰め込む」**というPASOULの製品哲学に対する、ユーザーそれぞれの異なる反応なのです。中身の性能を重視する人は満足し、外殻の欠点が気になった人は不満を抱く。この記事の目的は、あなたが購入前にどちらのタイプなのかを自覚する手助けをすることにあります。
まとめ

最後に、今回の調査結果をエンジニアの視点からまとめます。
- 出自: PASOULは、埼玉県の日本企業「オーエープラザ」が企画・品質管理を行う日本のブランドです。
- 製造: 価格を抑えるため、製造は中国の専門工場に委託する、現代的な分業体制をとっています。
- 価値: その本質的な価値は**「処理性能のコストパフォーマンス」**にあります。強力なCPU、十分なメモリ、高速なSSDが驚くほど安価に手に入ります。
- 代償: その安さを実現するために、筐体の質感、バッテリー、スピーカー品質といった付加価値は大きく削ぎ落とされています。
このトレードオフを理解した上で、あなたへの最終的なアドバイスは以下の通りです。
【こんな人にはおススメ】
自宅やオフィスなど、決まった場所でPCを使うことが多く、何よりも処理性能を重視する方。外部機器の利用も厭わず、丁寧な取り扱いができる方。
【こんな人は避けるべき】
出張や通学でPCを頻繁に持ち運び、バッテリー駆動時間を重視する方。キーボードの打鍵感や製品全体の質感など、道具としての心地よさを求める方。
製品設計の世界では、魔法は存在しません。すべての製品は、選択とトレードオフの連続です。PASOULは、「洗練さよりもパワーを」という明確な選択をしました。もしその選択があなたの価値観と一致するなら、あなたは市場のどの製品よりも安く、驚異的なコンピューティングパワーを手に入れることができるでしょう。ただ、購入ボタンを押す前に、そのトレードオフを正しく理解しておくことが重要です。

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